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2020 年度 実施状況報告書

蛍光X線分析による食道癌の銅の分布分析と銅輸送体がもたらすNAC抵抗性機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K16387
研究機関九州大学

研究代表者

木庭 遼  九州大学, 医学研究院, 共同研究員 (10866776)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2022-03-31
キーワード食道癌 / 白金製剤 / 銅輸送体 / 蛍光X線分析 / 腫瘍微小環境
研究実績の概要

食道癌は予後の悪い消化器癌の一種であり、化学療法において白金錯体系抗腫瘍薬であるCisplatinがキードラッグとして知られている。しかし治療効果は十分といえず、白金製剤の治療抵抗性には銅輸送体が関与しているとの報告がある。本研究は、蛍光X線分析という光学的アプローチを用いてCisplatinを投与した食道癌組織中の銅の局所的な分布を可視化することで、腫瘍組織内の薬物動態や細胞活性の変化を明らかにし、銅関連輸送体がもたらす治療反応性や耐性獲得機序を解明するために開始された。
本年度は、食道癌組織を用いた銅輸送体の発現の評価に取り組んだ。まずヒト食道癌切除検体を使用し、銅輸送体関連因子であるCTR1/2, ATP7A/7Bに対し腫瘍内での発現を評価した。現在、当研究室では食道癌検体を用いたscRNA-seq解析にも取り組んでおり、すでに食道癌10症例程度のデータを所持している。scRNA-seqは単一細胞での網羅的な遺伝子発現解析を行える点で非常に画期的な手法であるが、それらの所持データを用いてCTR1/2, ATP7A/7Bの各細胞の網羅的な遺伝子発現を評価した。以前の代表者の報告では腫瘍の間質に白金が集積する傾向があったため、白金抵抗性に関与する銅輸送体においても間質に多く存在すると考えられたが、データ解析の結果、間質を構成する線維芽細胞以外にも、Tリンパ球やマクロファージを含んだ骨髄球系細胞にも発現することが判明した。また症例ごとに発現レベルも異なっている印象であった。白金製剤の抵抗性に関しては腫瘍微小環境が大きく関与していると考えられていたが、今回の解析により免疫細胞も白金抵抗性に関与している可能性が示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

ヒト食道癌切除検体を用いて銅輸送体であるCTR1/2, ATP7A/7Bの発現評価を行うために、当研究室でおこなっている食道癌検体を用いたscRNA-seqデータを用いて上記を評価すると、間質細胞を構成する線維芽細胞以外にもTリンパ球や骨髄球系細胞でも発現することが示され、免疫細胞を含めた腫瘍微小環境が白金製剤抵抗性に関与している可能性が示唆された。

今後の研究の推進方策

食道癌切除検体に対し、大型放射光施設Spring-8を使用し蛍光X線分析測定を行うことで白金・銅を含めた生体内必須金属元素の分布を可視化し、定量化を行う。またHE染色と比較しどの細胞に多く分布しているかを評価する。
さらにそこで得られた銅・白金の微細な分布や白金製剤による治療効果などを総合的に検討することで、白金製剤抵抗性に寄与する因子を解析する。

次年度使用額が生じた理由

ヒト食道癌切除検体を用いて銅輸送体であるCTR1/2, ATP7A/7Bの発現評価を行っているが
研究計画が当初と異なり、進捗に遅れが生じているため。
次年度はさらに発現評価を行うため、免疫染色用試薬、scRNA受託解析などに使用する予定である。

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公開日: 2021-12-27  

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