PARP阻害薬olaparibは、相同組換え修復に関わるBRCA1またはBRCA2に変異を持つ乳がん、卵巣がん、膵がんなどに対する合成致死性抗がん剤として開発された。副作用が少ない抗がん薬として期待されているが、olaparibの耐性機構は未だ詳細に解析されておらず、その耐性を克服するための治療法も確立されていない。そこで本研究では、 PARP阻害薬耐性に寄与する新規因子を同定し、その耐性機構を解明することを目的として研究を行った。 そのために、本年度は、BRCA1/2遺伝子に変異を持たない膵がん細胞株においてCRISPR/Cas9システムを用いて、BRCA1ノックアウト細胞株の構築を試みた。その結果、4株のBRCA1ノックアウト細胞の候補が得られた。ウェスタンブロット解析より、そのうち2株においてはBRCA1発現を完全に低下させ、細胞生存率アッセイより、親株と比べて、olaparib高感受性を示すことが明らかとなった。これらの結果より、構築したBRCA1ノックアウト細胞株を用いてolaparib耐性株の単離を行い、結果的に、olaparib耐性を獲得した複数のBRCA1ノックアウト細胞株を構築することができた。細胞生存率アッセイより、olaparib耐性株のolaparibに対するIC50値はBRCA1ノックアウト細胞と比べて、約10~20倍上昇することが明らかとなった。よって、本研究において構築したolaparib耐性細胞株は、olaparib耐性因子を同定するために有用な細胞株であることが示唆された。今後、これらの耐性細胞株を用いて、olaparib耐性誘導機序を解明したいと考えている。
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