研究課題/領域番号 |
20K16389
|
研究機関 | 東邦大学 |
研究代表者 |
山口 優也 東邦大学, 医学部, 助教 (60779966)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 光線力学的療法 / 光感受性物質 / 胆道癌 / ポルフィリン / アポトーシス / ミトコンドリア / 癌 / LED |
研究実績の概要 |
胆道癌は、早期発見が難しく、化学療法も発展途上であることから新たな治療法が求められている。近年、光線力学的治療法(PDT)が低侵襲な治療法として注目されているが、現在の光感受性物質(PS)は、癌細胞への選択性が不十分である等の問題は未解決であり、臨床有用性と安全性について課題が残されている。 本研究の目的は、独自開発したPSである水溶性リンポルフィリン錯体(Ptpp)の癌細胞傷害機能の分子基盤およびマウス癌異種移植モデルを用いてその癌治療法の有用性を解明することである。 2020年度は、1)Ptppを用いたLED光源によるPDTの細胞傷害性をヒト胎児腎細胞(HEK293)、マウス胎児線維芽細胞(MEF)、およびヒト胆道癌細胞株(NOZ)や異なるヒト癌細胞株を用い、MTTアッセイで評価した。その結果、癌細胞で有意に生存率が減少する条件を見出し、この条件における細胞死誘導分子機構の探索を行った。2)Ptppの細胞内集積量を定量するため、NOZ細胞へPtppを投与し、継時的に細胞を溶解した。細胞溶解液中のPtppを分光光度計にて定量することにより細胞内集積量を測定した。3)Ptppの細胞内局在を解析するために、各種細胞内小器官に対する選択性蛍光プローブによる染色を行った。Ptppが主にミトコンドリアの蛍光プローブと共発現することから細胞内局在はミトコンドリアであると示唆された。4)Ptppを用いたPDTによる細胞死の分類および誘導分子機構を解明するため、フローサイトメトリー法、TUNEL法、ウエスタンブロッティング法、免疫組織化学法を用いて解析した。細胞死は、主にアポトーシスであり、PDT後、継続的にアポトーシス様細胞死が増加した。PDTによるアポトーシス関連分子への影響は、アポトーシス促進分子(Bax)の増加、およびアポトーシス抑制分子(Bcl-xL)の低下を確認した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
代表者の所属先変更および消耗品の物流が世界的に滞った関係で当初の計画では、Ptppの細胞内集積量、細胞内局在、細胞内代謝機構を解析する予定であったが、細胞内代謝機構の解析は、2021年度へ変更し、2020年度は試薬や抗体が揃っていたアポトーシス誘導分子機構の解析を先行した。したがって、全体的な研究計画の進行は、おおむね順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
Ptppを用いたLED光源によるPDTの細胞内代謝機構を解析するため、細胞内取り込み機構、エンドサイトーシス関連分子機構、細胞質からミトコンドリア内への輸送機構、細胞外排出機構についての発現解析を免疫組織化学法とウエスタンブロッティング法により解析する。また、機能解析では候補分子に対するsiRNAをNOZ細胞への導入の有無にて比較検討する。さらに、マウス癌異種移植モデルにおけるPtppを用いたPDTの癌抑制効果を検討する予定である。 当初計画にはなかったが、Ptppがミトコンドリアに局在することが分かったのでミトコンドリア機能への影響を解析することで、より詳細なPtppを用いたPDTの作用機序を明らかにしていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
代表者の所属先変更に伴い、実験に使用する消耗品の購入が予定よりも少なくなった。さらに、参加した学会が全てオンライン開催であったため、旅費を計上する必要がなかった。 次年度使用額は、次年度分と合わせて抗体等の実験試薬の購入に充てる予定である。
|