ウイルス療法は固形がんに対する新規治療であり、国内外で難治がんに対する臨床開発が進んでいる。肉腫は難治希少がんであり、理論上ウイルス療法が有効であると考えられるが、肉腫に特化したウイルス療法の開発は行われていない。 本研究は、腫瘍特異蛋白であるミドカイン(MK)をプロモータとして、G47Δ (第3世代がん治療用ヘルペスウイルス1型)の ICP6遺伝子を制御する新規ウイルスを用いて、肉腫に最適化したウイルス療法を確立することを目的とした。また、市販の肉腫細胞株のみならず、国立がん研究センター研究所で樹立されている患者由来肉腫細胞(patient-derived sarcoma cells)を用いた検討も行うことで、より臨床に即した検討を行うことも計画した。 研究計画全体としては、市販の肉腫細胞株および患者由来肉腫細胞(patient-derived sarcoma cells)を用いて、殺細胞効果(in vitro)・ウイルス複製効率(in vitro)・腫瘍縮小効果(in vivo)などの実施を予定した。 市販の肉腫細胞株における検討は予定通り完了し、患者由来肉腫細胞(patient-derived sarcoma cells)を用いたマウス皮下腫瘍モデル2種も確立した。今後はこれらを用いて、新規ウイルスによる腫瘍縮小効果の検討(in vivo)を実施していく予定である。 患者由来肉腫細胞(patient-derived sarcoma cells)という臨床に即した材料におけるウイルス療法の有効性を示せれば、「希少難治がんである肉腫に対するウイルス療法」の臨床試験へと進む大きな根拠となる。本研究により、手術以外に根治治療のない難治希少がんである肉腫の治療体系にブレイクスルーがもたらされることが期待される。
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