B細胞性腫瘍を標的としたCD19.CAR、多発性骨髄腫に対するBCMA.CARなど血液腫瘍に対するCAR-T細胞療法はすでに臨床応用されているが、急性骨髄性白血病(AML)に対するCAR-T細胞療法は確立していない。申請者は、これまでにAMLに対する、造血幹細胞への毒性の少ない CAR-T細胞として、C-type lectin like molecule-1 (CLL-1)を標的とした CLL-1.CAR-T細胞を開発した。Constitutive signaling from an engineered IL-7 receptor (C7R)を共発現することによって、CLL-1.CAR-T細胞の抗腫瘍効果を増強することを試みた。 2つのレトロウイルスベクターを用いたCLL-1.CAR-T細胞とC7Rの遺伝子導入は、共発現率25-45%程度であった。1つのコンストラクトにまとめることで、安定して60-70%程度の発現率を得られるようになった。 CLL-1.CAR/C7R-T細胞は、サイトカイン非存在下で、リン酸化STAT5を持続的に発現することを、フローサイトメトリーにて確認した。サイトカイン非存在下で長期培養を行ったとき、CLL-1.CAR-T細胞はDay 30には死滅したが、CLL-1.CAR/C7R-T細胞は有意に長期間培養された。CLL-1.CAR-T細胞とCLL-1.CAR/C7R-T細胞をそれぞれCLL-1陽性細胞株であるHL60と共培養した際、CLL-1.CAR/C7R-T細胞はより長期間抗腫瘍効果を示した。 in vivoにおいて抗腫瘍効果の検証を行うため、NSGマウスによるxenograftモデルを用いた。CLL-1.CAR/C7R-T細胞投与群では明らかな抗腫瘍効果の増強を認めたが、GVHDによると思われる合併症を併発し、生存の延長にはつながらなかった。
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