進行・再発EGFR変異肺がんに対する第一選択薬は、EGFRキナーゼ阻害剤(EGFR-TKI)である。しかし、EGFR変異肺がんの約4~5%を占めるエクソン20挿入変異を有する肺がんは、現在臨床応用されているEGFR-TKIに耐性を示すことが知られている。 初年度の解析で、マウスpro-B細胞であるBa/F3細胞に、頻度の高い5種類のEGFRエクソン20挿入変異(A763insFQEA、V769insASV、D770insSVD、H773insH 、H773insNPH)を有するEGFR遺伝子を導入し、poziotinib とtarloxotinib-Eの治療効果を検討した。その結果、これらの薬剤がある程度有効であることを同定した。そのため、これらの薬剤を使用した場合に生じ得る獲得耐性2次的変異を探索し、C797SおよびT790M 2次的変異が耐性変異として検出された。さらに、もとのエクソン20挿入変異の種類によって、どちらの2次的変異が生じやすいかに偏りがあった(Nishino et al. Thorac Cancer. 2021)。最終年度では、最近米国FDAでも承認されたmobocertinib(TAK-788)に加え、臨床試験でも有望な結果が示唆されているCLN-081、sunvozertinib(DZD9008)について、初年度に作成した5種類のEGFR exon 20 挿入変異モデルを用いてその有用性を検討した。血中濃度も加味した検討では、いずれのバリアントにも効果のある薬剤として、mobocertinibとsunvozertinibが同定された。
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