研究課題/領域番号 |
20K16407
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
石井 範洋 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (00711508)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | RRN3 / 膵癌 / 予後不良 / 増殖能 / 浸潤能 / 薬剤感受性 |
研究実績の概要 |
膵癌切除検体を用いてRRN3発現の意義について検討を行った。RRN3の発現は免疫組織化学染色を用いて評価を行い、RRN3は癌細胞の核に発現がみられることがわかった。核の染色割合で高発現と低発現群に分類したところ、高発現群は全生存率において有意に予後不良であることが示された(P=0.021)。また、臨床病理学的因子とRRN3発現との関係では、Ki-67発現と有意に相関を示し、高発現群でKi-67発現が高度であった。全生存期間におけるRRN3を含む臨床病理学的因子の単変量、多変量解析ではRRN3高発現は独立した予後不良因子として抽出された(HR1.974, P=0.015)。 RRN3発現が膵癌の予後や悪性度と関わることが明らかとなったため、続いてIn vitroの実験系で膵癌細胞株を用いて、RRN3の機能解析を行った。当科で保有する膵癌細胞株5種類においてRRN3発現を確認し、高発現を認めたPANC-1細胞株を用いて解析を行った。RRN3特異的なsiRNAを用いてRRN3発現を抑制し、Western blotとRT-PCR法にて抑制の確認を行った後に、増殖能や浸潤能の変化を評価した。RRN3を抑制した細胞株では、増殖能はControlと比較して有意に低下し、浸潤能に関しても有意な低下を認めた。また、ゲムシタビンを用いて膵癌細胞株の薬剤感受性の変化についても評価を行ったところ、RRN3を抑制することで薬剤感受性の亢進が認められた。今後はRRN3を抑制した際のmRNAの変化を網羅的に解析し、膵癌の悪性度に関わるRRN3のシグナル経路の解析を計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
臨床検体を用いたRRN3発現の解析が終了し、今年度はIn vitroの解析を中心に行った。次年度はIn vitroでのシグナル経路解析に加え、マウス皮下腫瘍モデルを用いてRRN3あるいはそのシグナル経路が治療標的となりうるかの検討を行い、進捗状況としては概ね順調と判断している。
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今後の研究の推進方策 |
今後はIn vitroでRRN3発現を抑制した際のmRNAの変化を網羅的に解析(CAGE法)し、膵癌の悪性度に関わるRRN3を介したシグナル経路の解析を検討する。また、RRN3のOverexpressionも行い、抑制した際の影響がキャンセルされることの確認も行う。 また、In vivoでのマウス皮下腫瘍モデルにおける検証を行う。NOD-SCIDマウスの皮下に膵癌細胞株を摂取し、皮下腫瘍モデルを作成する。皮下腫瘍に対してElectroporation法にてRRN3のsiRNAを導入し、RRN3発現の抑制で腫瘍の増大に差があるかを検証する。 これらの結果でRRN3が治療標的として有望な場合には、共同研究の下、共同研究者の保有する化合物ライブラリーからRRN3を阻害する作用をもつ化合物のスクリーニングを行い、ヒット化合物の解析へとつなげ、RRN3を治療標的とした治療戦略を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度マウスを用いた実験とIn vitroにおけるRRN3の過剰発現の実験まで到達できなかったため、次年度マウス購入とIn vitroにおける過剰発現の実験費用に充当する。
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