研究実績の概要 |
前年度行った膵癌切除検体とRRN3発現の意義についてさらに症例数の蓄積を行った。計96例について解析を行い、RRN3の発現は免疫組織化学染色を用いて評価を行い、RRN3は癌細胞の核に発現がみられることがわかった。核の染色割合で高発現と低発現群に分類したところ、高発現群は全生存率において有意に予後不良であることが示された(P=0.014)。また、臨床病理学的因子とRRN3発現との関係では、Ki-67発現と有意に相関を示し、高発現群でKi-67発現が高度であった。全生存期間におけるRRN3を含む臨床病理学的因子の単変量、多変量解析ではRRN3高発現は独立した予後不良因子として抽出された(HR2.17, P=0.0086)。 In vitroの解析では前年度の膵癌細胞株PANC-1に加えて、SW-1990を用いて同様の結果を得ることができた。RRN3特異的siRNAを用いてRRN3発現を抑制し、PANC-1と同様にRRN3を抑制した細胞株では増殖能、浸潤能の低下を認めた。また、抗癌剤感受性に関してはゲムシタビンに加えて、パクリタキセルの解析も加えて、両薬剤に対する感受性の亢進が認められた。 また、In vivoの実験としてPANC-1を用いたマウス皮下腫瘍モデルを作成し、RRN3発現の抑制を行うことで、腫瘍の増大の進行が抑制されることが明らかとなった。 これら臨床検体、In vitro、In vivoの研究成果からRRN3は膵癌における治療標的となる可能性が示された。
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