研究実績の概要 |
本研究は、粘液型脂肪肉腫(ML)の腫瘍免疫を遺伝子発現と病理組織から解明することで、予後予測のみならず、将来のがん免疫療法の薬剤応答への評価指標として期待ができるものである。我々は以前の研究で、遺伝子発現量データから、MLをhot腫瘍とcold腫瘍に分類し、予後や免疫学的特徴が大きく異なることを示した。このように近年、解析技術の発展により、CIBERSORTやMCP-counterなどのソフトを用いて遺伝子発現データのみから腫瘍内免疫環境を推測することが可能である。しかし、実際のがん組織内で、がん細胞の周囲に免疫細胞が存在するのか、全く関連がないところに存在するのか、といった細胞同士の位置関係が、免疫細胞の働きへ与える影響は大きいと考えられる。そのため、本研究では、病理画像上での免疫細胞・癌細胞の分布と臨床データ・遺伝子発現データとの関連の検証を目的とした。近年、B細胞やマクロファージの癌免疫環境の重要性がわかってきたため、2020年度は同定する免疫細胞を腫瘍浸潤リンパ球から大幅に染色の種類を増やし、CD3, CD8, PD1, PD-L1, CD20, CD68, FoxP3を染色する方針とした。まずそれぞれを単染色し、病理画像サンプルを取得した。次に、免疫細胞の同定に移った。免疫細胞の同定は、深層学習モデルと既存の画像解析手法で行った。その結果、非常に高い精度で同定することに成功した。その同定した細胞の重心の位置を取得し、病理画像上の免疫細胞の分布に用いた。病理画像の分布の定量化し、免疫細胞同士の分布の関係性を評価する方法として、複数の数理学的な方法を用いた。結果、免疫細胞同士の位置関係の定量化に成功した。
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