我々はこれまでに消化器がんにおけるRNA修飾の検出によるがん診断方法を確立してきた。 本研究ではさらに多くのがん種に対して、RNA修飾の検出によるがん診断を適用するために、単分子シーケンサーによるRNA修飾の検出技術の確立及び臨床検体におけるRNA修飾の計測に取り組んだ。 まず、RNA修飾の化学合成品やRNA修飾を含有する核酸配列を用いて、単分子シーケンサーで計測することで、5-methylcytosine(5mC)をはじめとする各種RNA修飾由来のコンダクタンス情報を取得し、無修飾核酸との判別技術を確立した。 また、各RNA修飾の合成品の計測と並行して、様々ながん種の患者検体を集積しており、消化器系がん、婦人科系がん、泌尿器系がんなど計138検体からRNA抽出が完了し、順次、単分子シーケンサーによる計測を進めている。 単分子シーケンサーでの計測を進める中で、以前の質量分析による計測時と同様に、消化器がんで亢進しているlet-7aの19位のN6-methyladenosine(m6A)の検出に成功した。さらに、質量分析では検出することができなかったlet-7a中の他の箇所でも修飾を検出することができ、単分子シーケンサーは質量分析よりも高感度にRNA修飾を検出可能であることが示された。また、がん種特異的なバイオマーカーを同定するために、様々ながん種において検出されたRNA修飾を解析中であり、今後、本研究の成果として公表する予定である。 本研究の成果はRNA修飾の検出によるがん診断の実現に貢献するものである。
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