研究課題
がん再発には細胞増殖が抑制された休眠がん細胞が関わっているが、休眠がん細胞は低分子の抗がん剤に高い抵抗性を示す。光線力学療法 (ALA-PDT)は、5-アミノレブリン酸 (ALA)の投与後に光感受性物質であるプロトポルフィリンIX (PpIX)が腫瘍特異的に蓄積することを利用した治療法である。研究代表者は、3次元培養を用いた高密度培養系によって高休眠性のモデル構築を試み、休眠がん細胞の特徴を示すことを確認した。また、休眠がん細胞が非休眠がん細胞よりもPpIXを多く蓄積し、ALA-PDTに対して感受性が高いことを世界に先駆けて見出した。本研究では、PpIXの腫瘍特異的蓄積メカニズムを明らかにし、PpIXの蓄積促進を通じて休眠がん細胞に対する新規治療法を開発することを目的とした。始めに、休眠による代謝変化の全容を把握するために、高休眠性モデルと低休眠性モデルにて構築したヒト前立腺がん由来細胞株のマイクロアレイ解析を行った。その結果、細胞周期の停止を示す遺伝子発現の変化に加え、脂質代謝の顕著な亢進が認められた。つまり、休眠性と脂質代謝はがん細胞において正の相関を示すことが示唆された。次に、脂質代謝とALA-PDTの相関関係について評価を行った。アシルCoAシンテターゼの阻害剤 (Triacsin C)を事前投与下におけるALA投与後のPpIX蓄積は顕著に減少した。加えて、ALA-PDT後の細胞生存率も上昇したことから、脂質代謝の阻害がPpIX蓄積ならびにALA-PDT効果に影響を及ぼすことが明らかとなった。以上のことから、腫瘍細胞における脂質代謝の活性度がALA-PDTの治療予測因子となりえ、なおかつ脂質代謝を亢進させることでALA-PDT効果を増強できる可能性が示唆された。
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Photodiagnosis and Photodynamic Therapy
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JPA 日本光線力学学会 NEWS LETTER
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