研究課題/領域番号 |
20K16416
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
高橋 純一 九州大学, 大学病院, 医員 (60869569)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 肝内胆管癌 / リポジショニング |
研究実績の概要 |
本研究は、難治性癌である肝内胆管癌(ICC)を、開発期間の短縮や医療費の抑制が見込めるドラッグリポジショニング手法を用いて治療薬を見つけ、その作用機序を明らかにすることを目的としている。 ICC外科的切除マルチサンプリング検体を10症例(各症例腫瘍部3-9ヶ所、正常肝組織1ヶ所)収集し、各々全エキソンシーケンスとRNA sequenceを施行した。得られたデータと大規模胆管癌遺伝子データセット(The Cancer Genome Atlas ; TCGA)を使用し、複数の症例間で共通に存在するドライバー変異NRAS、BAP1、SMAD4、ARID1Aを選出し、それぞれの遺伝子でドライバー遺伝子の変異型症例と野生型症例間で有意に発現が異なる遺伝子を調べ、九州工業大学 山西芳裕教授の有するL1000データベース(既存薬1112種を株化細胞66種に投与して得られた遺伝子978個の発現プロファイル)と合わせ、スコア化した。その結果、BAP1に注目し、有望な薬剤として5薬剤を選出した。 選出した薬剤をICC株化細胞に投与し、増殖能の変化を比較検討し、2薬剤(薬剤X、薬剤Y)に注目した。BAP1をknockdownしたICC株化細胞と野生型の株化細胞に投与し、RNAとタンパクを抽出し、それぞれ、RT-PCR、Western Blottingを行った。PCRではcell cycle、代謝に関わる遺伝子がBAP1 knockdown群でより強く発現が変化し、Western Blottingでは、G2M遺伝子発現が薬剤Xの濃度依存的に発現が変化した。現在、public dataを使用して作用機序を調べており、in vitroの実験結果を支持する結果が得られてきている。 今後RNA sequenceを提出予定であり、更なる解析を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肝内胆管癌株化細胞(ICC cell line)であるSSP25にsanger sequenceを行い、BAP1変異がないことを確認した。治療候補薬5薬剤を、既報などから濃度を割り振り、ICC cell lineに投与した。各薬剤の増殖能の変化を比較検討し、2薬剤(薬剤X、薬剤Y)に注目した。 2薬剤をBAP1 knockdown群とBAP1野生型群に濃度を割り振り、投与し、RNAとタンパクを抽出し、それぞれ、RT-PCR、Western Blottingを行った。PCRではcell cycle、代謝に関わる遺伝子がBAP1 knockdown群でより強く発現が変化し、Western Blottingでは、G2M遺伝子発現が薬剤Xの濃度依存的に発現が変化した。現在、更なる遺伝子変化がないか実験を継続している。 また、public dataを使用して作用機序を調べており、in vitroの実験結果を支持する結果が得られてきている。
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今後の研究の推進方策 |
薬剤の効果の検証として、CRISPR-Cas9システムでゲノム編集し、BAP1 knockout株を作成し、MTT assay、colony formation assay、RT-PCR、Western Blottingによる変化を確認する。in vivoの実験としてZebrafishとヌードマウスによる検証を予定している。ZebrafishではBAP1 knockout株を生後2日のZebrafishに接種し、Xenograftを形成し、生育の時期に合わせて薬剤を投与し、抗腫瘍効果(腫瘍縮小効果)の確認を行い、ヌードマウスではBAP1 knockout株による皮下腫瘍モデルを作成し、薬剤投与による抗腫瘍効果(腫瘍縮小効果)の確認を行う。 作用機序の解明として、蛋白アレイ、RNAsequenceを行い、薬剤投与前後の変化をスーパーコンピュータ(SHIROKANE)を使用し、解析を行う。また、同定した化合物の抗腫瘍効果の評価として、同定した分子変異のknockoutでのin vitroでの解析としてオルガノイドを使用したアプローチを検証する。最後に、判明した標的変異に対して、臨床検体における変異を調べ、臨床的意義を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度の実験消耗品として使用予定。
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