研究課題
本研究の目的は、肝内胆管癌 (ICC)におけるLong interspersed nuclear elements (LINE-1)のメチル化の状態及びICCのエピジェネティクスの制御として重要であるIDH変異の状態と臨床病理学的項目との関連について包括的に評価することにより、LINE-1及びIDH変異を予後改善のための革新的な治療ターゲットやバイオマーカーとして確立させ、ICCの予後改善に貢献することである。本年度は研究計画に基づき、熊本大学病院消化器外科におけるICCの切除サンプルを用いて、LINE-1プロモーター領域のメチル化レベルの検討を行った。ICCは間質を豊富に含む癌であることから、癌部のみを顕微鏡下にマーク後、可及的に癌部のみの組織を集め、DNAを抽出した。その後、バイサルファイト法、パイロシークエンス法によりLINE-1のプロモーター領域のメチル化レベルを測定した。2001年5月から2016年9月までに肝切除を行われた67例のICC症例の、癌部および非癌部のサンプルを用いた。癌部は81.5±11.8 (mean±SD), 非癌部は84.3±3.7であり、両群間に統計学的有意差は認めなかった(p=0.0508)次に、患者群をLINE-1メチル化レベルの4分位点によって2群{Q1-3(高LINE-1メチル化)およびQ4(低LINE-1メチル化)}に分け、臨床病理学因子について解析した。年齢、肝炎ウイルス感染、CA19-9値、腫瘍径、脈管侵襲、腫瘍の分化度において両群間において有意差は認めなかったが、Q4群において有意にリンパ節転移の頻度が高かった(p=0.04)。さらに、LINE-1低メチル化群は高メチル化群に比べ、全生存期間で有意に予後不良であった(Log-rank p=0.045)。無再発生存期間では、両群間に有意差を認めなかった(Log-rank p=0.36)
2: おおむね順調に進展している
研究計画に記載の通りに研究が進んでいるため。
ICCから抽出した癌部のDNAを用いて、IDH変異(IDH1及びIDH2)をパイロシークエンス法を用いて評価する。我々はすでに食道癌におけるIDH1及びIDH2変異について報告しており、細胞株にIDH1及びIDH2変異を組み込んだ変異株を有している。これらをpositive controlとして用いることにより、ICCサンプルのIDH変異について評価することが可能である。得られた結果をもとに臨床病理学的背景(年齢、性別、腫瘍マーカー、腫瘍の大きさ、リンパ節転移、脈管侵襲の有無、進行度等)、肝切除後の予後(無再発生存期間及び全生存期間)との関連を解析する。さらに本年度に測定したLINE-1メチル化レベルとの関連についても併せて評価する。
理由:試薬、消耗品については、医局内保管のものを使用することができた。また、旅費については、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響により学会開催形式がハイブリッド開催へ変更となる事が多く出張が減った為、未使用額が生じた。使用計画:試薬、消耗品の購入及び研究データの管理、資料整理を行ってもらうための事務補佐員の雇用経費に充てたい。また、最新の研究情報を得るため、及び、研究成果発表のための学会出張旅費にも充てたいと考える。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 2件)
JCI Insight
巻: 6 ページ: -
10.1172/jci.insight.140180
Annals of Surgical Oncology
巻: - ページ: -
10.1245/s10434-020-09383-9
Gastroenterology
巻: 160 ページ: 455~458.e5
10.1053/j.gastro.2020.09.028
Clinical and Molecular Hepatology
巻: 26 ページ: 618~625
10.3350/cmh.2020.0142
巻: 27 ページ: 903~904
10.1245/s10434-020-09039-8
巻: 28 ページ: 1572~1580
10.1245/s10434-020-09022-3
International Journal of Cancer
巻: 147 ページ: 532~541
10.1002/ijc.32982