研究実績の概要 |
本年度は、膵癌における補体制御因子発現の確認、膵癌微小環境の構成細胞による補体制御因子(complement regulatory proteins: CRP)発現機序について以下の結果を得た。 1.The Cancer Genome Atlas project(TCGA)データベースの2次情報から、代表的なCRPであるCD46, CD55, CD59と膵癌微小環境構成因子に関する遺伝子発現の相関を検討した。結果、CD46に関しては相関する因子は明らかではなかったが、CD55は膵星細胞とNK細胞、CD59は単球、Treg、骨髄由来抑制細胞の発現と正の相関があり、これらの細胞との相互作用がある可能性が考えらえた。2.CD55の発現は膵星細胞との共培養で増強し、PGE2が関連していることが示唆された。また、CD59発現に対する単球系の働きを検討するため、PMA誘導ヒト急性単球性白血病細胞株THP-1を用い、単球系由来サイトカイン(IL-6, TNF-α)がCD59発現を増強することを明らかにした。以上の結果よりCRP発現は膵癌微小環境中に複数の因子によって発現が調整されている可能性が示唆された。 また、次年度と目標であったモノクロナール抗体の補体障害性細胞障害及び抗体依存性細胞障害に対するCRPの影響を細胞実験により検証した。膵癌細胞におけるCRP発現をRNAiにより減弱させモノクロナール抗体cetuximab の細胞障害作用について検討したが、CRP発現減弱による細胞障害作用の増強は確認できなかった。 一方、新たな知見として、膵癌細胞内に補体C3aが発現すること、補体C3a-C3aR受容体系とEMTとの関連が確認された。
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