研究課題
大腸癌患者に他臓器癌を発生する分子機構-特にゲノム全体の脱メチル化異常を介した発癌形式-を明らかにするため、前年度は症例毎の臨床病理情報を搭載したデータベースの完成を進め、現在約2,600例の臨床病理情報-生存、再発の有無、再発形式、家族歴、他臓器癌の情報を取集している。昨年度は作成したデータベースを解析した。大腸癌患者の内、FAP、リンチ症候群、colitic cancerを除いた2,410例において、併発した他臓器がんは胃が154、肺に99と多く 次いで 前立腺70 乳腺に44だった。2410例のうち533人に、627の他臓器がん発症を認めた。5重複癌症例を1名、4重複癌を5例認めた。627の発がんのうち既往として388、同時性84、大腸癌の術後の155の発症を認めた。他臓器がん合併群533例と非合併群1877例での臨床病理学的比較では、年齢は非合併群69歳に比べ合併群では72歳と有意に高齢で、また、他臓器がん合併群では男性の割合が有意に高く喫煙の習慣があった。多発大腸癌症例が273例(全症例の11%)に認めているが、これは他臓器がんの有無で差を認めなかった。上記発がん数は国立がん研究センターが発表している予測発がん数から算出した641.0と比べほぼ同数だった。切除を施行した大腸癌患者において、他臓器癌の発がん率は、一般人口と比べ差が無い事が明らかという結果だった。他臓器がん合併群では高齢男性で、喫煙歴があり一般的なリスクと同内容だった。上記内容は2022年10月に開催されたJDDWで ”切除対象の大腸癌患者に併存する他臓器がんの特徴”として報告した。
3: やや遅れている
申請者が異動となり研究実験に取れる時間が少なくなりました。異動先でも進められる内容として作成したデータベースの解析を行っていましたが、上記報告の通り切除を施行した大腸癌患者において他臓器癌の発がん率は一般人口と比べ差が無いという結果でした。解析を進めると他臓器がん合併群では高齢男性で、喫煙歴があり一般的なリスクと同内容であり、大腸癌患者に対して他臓器癌をターゲットとしたスクリーニングは不要と結論となってしまい本研究の当初の主張と異なる結果となっており方針の転換が望まれるか検討を要しました。
上記報告の通り、切除を施行した大腸癌患者において、他臓器癌の発がん率は、一般人口と比べ差が無い事が明らかという結果だった。他臓器がん合併群では高齢男性で、喫煙歴があり一般的なリスクと同内容だった。大腸癌患者に対して他臓器癌をターゲットとしたスクリーニングは不要と結論できてしまうが、大腸癌患者において、性別や喫煙などの様に他臓器癌を合併する因子として抽出できるものがあるかという観点でsatellite α transcriptsやsatellite α 領域の脱メチル化程度を検討していく。
研究者の異動に伴い実験活動の低下があり、当該助成金が生じました。翌年度分として請求した分と合わせた使用計画としては他臓器癌発症例の大腸癌患者を絞ってsatellite α transcriptsの測定を行い、同結果とこれまでの学会報告を含めた論文作成を行っていく費用にさせて頂きます。
すべて 2022
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)
International Journal of Oncology
巻: 60 ページ: -
10.3892/ijo.2022.5351.