研究課題/領域番号 |
20K16422
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
原田 宏輝 北里大学, 医学部, 助教 (10623192)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 胃癌 / 腹水洗浄細胞診 / DNAマーカー / CDO1遺伝子 / Droplet Digital PCR |
研究実績の概要 |
我々は、前向きに早期胃癌症例、進行胃癌症例合わせて400例の腹水洗浄細胞診検体の収集を完了した。本研究は腹水洗浄細胞液中の微量癌細胞を当教室で独自に開発した癌特異的DNA markerを用いて検出し、その結果を臨床病理学的因子と比較する前向き臨床研究である。メチル化特異的Real time PCR法にて行っていた従来の方法を改善し、Droplet digital PCR法を応用したメチル化特異的PCR (dd-MSP) を用いて感度・特異度を新たに算出することとした。また、secondary endpointである予後との関連を調べ微量癌細胞検出と腹膜播種の出現についての関係を明らかにする。 当該年度において、dd-MSP法での胃癌腹水洗浄液中の微量癌細胞の検出における感度、特異度の算出を行った。dd-MSPの平均は38.1 copies/µL (範囲0-321 copies/µL) であり、1検体でのみdd-MSPによるメチル化検出ができなかった。この検体は従来のReal time PCR法でも検出は出来ていなかった。Real time PCR法とdd-MSP法での微量癌細胞の検出感度における相関係数は非常に高く、0.96であった (p<0.0001)。微量癌細胞を予測するdd-MSPの至適カットオフ値は0.41と算出され、その結果、感度87.1%、特異度88.8%、AUC=0.93、p<0.0001という結果であった。至適カットオフ値0.41を用いたdd-MSPの定量では4検体がdd-MSP陰性となった。 これらの結果より、dd-MSP法での胃癌腹水洗浄液中の微量癌細胞検出は感度、特異度共に高く、実臨床に応用可能な可能性のある有望な方法であると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
primary endpointである感度・特異度についての検討を終え、現在論文投稿を行っている。さらに、他遺伝子 (HOPX、Reprimo遺伝子) における、内在性コントロール遺伝子の絞り込みを終え、dd-MSP法での微量癌細胞の検出感度・特異度の診断精度について検討を終えている。secondary endpointの予後については一定の経過観察を待つ必要がある。しかし、それは2本目の論文として次年度に解析する予定であり、研究の進捗状況はおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
現在、対象である400検体におけるDroplet Digital PCR法での微量癌細胞の検出診断精度の検討を終え、論文投稿を控えている状況である。 次年度では、Secondary endpointの予後についても、観察期間の延長を待ち、解析を行う予定である。dd-MSP法では従来の検出法 (細胞診断) では予測できなかった再発例も経験しており、再発予測因子という面でも期待が持てる。
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次年度使用額が生じた理由 |
dd-MSP法での微量癌細胞検出における感度、特異度についての論文投稿料や予後解析を行う上での解析ソフトの費用、さらには論文査読後の再実験などのために差額を使用したいと考えている。
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