乳癌骨転移に特異的なバイオマーカーの同定を目指すため、以下の方法を行った。まず、ステップ1として東京医科大学病院乳腺科に通院中のLuminal乳癌患者において、①術後無再発患者、②骨転移単独乳癌患者の2群における血中エクソソーム内のマイクロRNAを抽出し、次世代シークエンサーを用いて、マイクロRNA発現を群間比較した。続いて、ステップ2として、東京医科大学病院乳腺科または東京医科大学八王子医療センター乳腺科に通院中のLuminal乳癌患者において、ステップ1の2群に③骨以外の遠隔転移患者を追加した3群で、ステップ1の方法と同様、マイクロRNA発現を群間比較した。登録症例は、採血前6か月以内に、全身の転移状態を画像評価し、術後無再発群に関しては、根治的手術が施されてから5年以上が経過しており、再発を認めない患者とした。ステップ1として、①無再発群11例、②骨単独転移群14例の全25例が登録された。2群間のエクソソーム内マイクロRNA発現解析により、無再発群に対し骨単独転移群で5種類のマイクロRNAの有意な発現上昇と、18種類のマイクロRNAの有意な発現低下を認め、全23種類のマイクロRNAが骨転移特異的なマーカー候補として同定された。続いて、ステップ2として①無再発群10例、②骨単独転移群11例、③骨以外遠隔転移患者11例の全32例が登録された。ステップ2において、ステップ1で同定された23種類のマイクロRNA発現を確認したところ、5種類において再現性が得られたが、個転移単独乳癌患者群と、新たに追加した骨以外の遠隔転移患者群との有意差が得られず、この5種類のマイクロRNAは転移・再発全般のマーカーであることが示唆された。また、ステップ2の3群比較において、骨転移のみに特異的に発現が低下するマイクロRNAが新たに10種類同定された。
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