研究課題
MDSC(myeloid-derived suppressor cell)と同様に免疫抑制にはたらく細胞として、M2マクロファージがある。卵巣高異型度漿液性癌患者23例の血清を用いて、CCL2とCXCL1濃度を測定したところ、CXCL1、CCL2ともに、正常ドナー血清と比べて高値であり、また臨床進行期が高くなると高値を示す傾向がみられた。CXCL1はMDSCの遊走を促進し、CCL2はマクロファージを遊走させる。我々は、マウスモデルを用いて、卵巣癌細胞において、B7-H3が発現するとCCL2が分泌され、マクロファージの誘導や分化を促進することを見出した。卵巣癌サンプルの腫瘍内のCCL2濃度とB7-H3濃度を測定したところ、両者には有意な正の相関がみられた。B7-H3発現の高い卵巣癌臨床サンプルにおいては、CD206陽性マクロファージが多く浸潤し、活性化細胞傷害性T細胞が少ないことが示された。以上より、卵巣癌において、免疫抑制性細胞が単独ではなく複合的に腫瘍を進展させる上で重要な働きをしていることが示唆された。また、子宮内膜の漿液性癌においても臨床サンプルの検討でMDSCが多く、細胞傷害性T細胞が少ない症例は予後不良であった。MDSCの働きを調べるために、PTENとTp53を内膜特異的に欠失させた漿液性癌のマウスモデルを作成したところ、p53を欠失させない類内膜癌モデルと比較して、MDSCの浸潤が多く、予後不良であった。抗Gr-1抗体でMDSCを減少させるとマウスの生存期間が延長した。漿液性癌モデルにおけるMDSCの増加は、CCL7の分泌増加と関連していることを見出した。以上より、卵巣癌のみならず子宮体部漿液性癌においてもMDSCは腫瘍進展に関わっていることが示唆された。
3: やや遅れている
臨床サンプルについては収集が滞っているため、既に入手済みのサンプルを使用した研究と動物実験・基礎実験を優先し、2本の論文を受理された
臨床サンプルの取得に関して、新個人情報保護法に沿った形での研究計画の変更が必要。引き続き同じ研究計画で進められる京都大学と共同研究する形で、臨床サンプルのサイトカイン・ケモカインを測定する。
臨床サンプルの収集が滞っているため、試薬等を使う実験ができていないため。次年度に新個人情報保護法に準拠した研究計画を倫理員会に通してあらためてサンプル収集に努める。また、共同研究先と共同でサンプル収集できるようにもする予定である。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件)
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