研究課題/領域番号 |
20K16432
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研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター) |
研究代表者 |
高森 信吉 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター), その他部局等, 呼吸器腫瘍科医師 (20839542)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 非小細胞肺癌 / マイオカイン / 免疫治療 / 免疫チェックポイント阻害剤 |
研究実績の概要 |
肺癌はわが国の癌死亡原因の第一位である。近年、IV期肺癌において、抗Programmed cell death-1(PD-1)抗体を含む免疫チェックポイント阻害剤が開発・臨床応用され、治療成績の向上に寄与している。非小細胞肺癌では、治療効果のバイオマーカーとして、腫瘍側のProgrammed cell death-ligand 1(PD-L1)発現が広く認識されている。しかしながら、実臨床において、PD-L1高発現であっても効果を認めない症例を認めており、腫瘍細胞におけるPD-L1発現以外の因子も免疫チェックポイント阻害剤の治療効果に寄与していると考えられている。 担癌患者において、CT画像の骨格筋面積にて診断される骨格筋量減少(サルコペニア)と予後不良の関係が多数報告されている。免疫治療を受けたIV期の肺癌患者の骨格筋量を検討した後方視的研究によると、サルコペニアは独立した予後不良因子と報告されており、免疫治療における骨格筋量の臨床的意義を示唆する結果と考えられる。しかしながら、担癌患者において、骨格筋量減少の生物学的背景について検討された報告は極めて少なく、なぜサルコペニアが免疫治療効果を落とすのかは未だ不明である。 近年、骨格筋を内分泌臓器の1つとして捉える認識が広まりつつあり、骨格筋由来のサイトカイン(マイオカイン)が注目されている。代表的なマイオカインとして、IL-6、SPARC、アディポネクチン等が知られている。これらのマイオカインは、腫瘍進展を抑制すると報告されているが、免疫チェックポイント阻害剤による治療を受ける進行非小細胞肺癌患者において、マイオカインが治療効果や安全性に対してどのような生物学的影響を与えるかは知られていない。そこで我々は、本研究の目的を免疫チェックポイント阻害剤による治療を受ける進行非小細胞肺癌患者において、マイオカインが免疫治療効果や安全性に対して与える生物学的影響を解明する事とした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年5月15日現在、目標症例数300例のうち、258例の症例集積を行った。約15例/月の集積が得られており、2022年8月までに目標症例数の300例を集積する予定であるため、概ね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
症例集積が終了したら集積していた血液検体、組織検体を全国から回収し、解析を行う。この際、血液検体はFilgen社で測定(マイオカイン)、その他の組織は免疫染色で腫瘍浸潤リンパ球等の測定を行う。なお、症例集積が終了してから半年は患者の予後を追う必要があるため、解析は2023年2月に主解析を行う予定である。その後、結果については3カ月程度で論文化、学会発表を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
症例集積を終えた後、一括でサイトカイン測定を予定している。66例で約80万円かかるため、合計約160万円の費用がかかる。また、国際学会発表と論文作成費用を合わせて約40万円の使用を予定しており、この合計として次年度使用額を約200万円と考えている。
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