本研究の目的は、肝胆膵癌においてSTMN1をターゲットとした新規治療アプローチを開発することである。STMN1の抑制においては、ピロールイミダゾームポリア ミド(PIP)化合物を用いたアプローチを行う。PIP化合物は、RNA干渉と同様に任意の遺伝子配列をターゲットとして設計可能であるにもかかわらず、RNA干渉の 弱点である生体内での不安定性、デリバリーの問題を克服した新規抗がん化合物である (Biol Pharm Bull. 2011;34(10):1572-7)。STMN1におけるPIPによる抑制 は現在まで報告が無く、極めて新規性の高いデータになる。前年度の研究実績(In vitroでの検討:肝胆膵癌細胞株におけるSTMN1標的PIP化合物の薬効評価)STMN1標的PIP化合物により膵癌、肝細胞癌の増殖能、浸潤能の抑制を確認することができた。 今年度の研究実績;STMN1標的PIP化合物とパクリタキセル(抗癌剤)の併用効果の検証:in vitroにおいて、パクリタキセルとSTMN1標的PIP化合物の併用にて膵癌細胞株Suit-2の増殖能の抑制効果を得ることができた。増殖抑制効果は、PIP化合物との併用で相乗的に上昇し、パクリタキセルの濃度依存性に効果が良好となった。 In vivoでの検討:マウスによるSTMN1特異的PIP化合物の薬効評価:膵癌細胞株Suit-2を用いて皮下腫瘍モデルを作成しSTMN1の発現を免疫染色にて確認した。さらに、STMN1標的PIP化合物の投与にて腫瘍の縮小効果を得ることができた。2022年度に基盤Cの科研費を取得することができ、同研究をさらに発展させる形で、STMN1標的PIP化合物と化学療法、温熱療法との相乗効果について研究を進める予定である。
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