研究課題/領域番号 |
20K16439
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
三嶋 雄太 筑波大学, 医学医療系, 助教 (80770263)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | CAR-T細胞 / マイクロ流体デバイス / iPS細胞 / Tumor-on-a-chip / がん免疫 / Immunotherapy / 再生医療 |
研究実績の概要 |
我々は、等しく抗原刺激を受けたT細胞集団が標的抗原を持つ細胞を認識して傷害する際に、細胞によっては連続的に標的細胞を排除する一方で、動きに乏しく標的をほとんど傷害しないT細胞も存在することを見出した。これらの集団を区別する要因を明らかにすることができれば遺伝子改変T細胞療法の機能改良や、T細胞の標的細胞傷害の基礎的なメカニズムに関して新しい知見が得られる可能性がある。 そこで本研究では、iPS細胞由来CAR遺伝子導入T細胞(CAR-iPS-T細胞)の特徴を活かし、ツールとして活用すること、またマイクロエンジニアリング技術を組み合わせて独自の細胞ソーティングデバイス(マイクロ流体デバイス)を作製し組み合わせて活用することにより、T細胞を運動機能により選別し、それらの機能に影響を与える因子の探索を行うことを目的としている。具体的には以下の5ステップで進めている。
①等しく抗原刺激を受けた活性化T細胞集団において、運動性の高いT細胞と低いT細胞が確認されるが、その集団を選別する系を構築する。②運動性の高いT細胞と低いT細胞では、標的細胞に対する実際の傷害能力に差があるか評価する。③運動性が高く障害能力が高いT細胞に優位に発現している遺伝子群から、実際に遊走能力や浸潤能力に影響を与え、固形がんにおける、免疫細胞療法の抗腫瘍効果を向上させることができる可能性の高い遺伝子をスクリーニングする。④スクリーニングした遺伝子を実際にT細胞に導入し、in vitroによる機能評価を試みる。⑤ ④において有望な遺伝子候補において in vivoによる機能評価を試みる。
本年度は、③の段階に入っており①②に基づいて選別を行った細胞群間の遺伝子発現プロファイルの取得まで進捗している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は、プロジェクト開始に先駆けて京都大学から筑波大学への異動や、新型コロナウイルス感染症蔓延防止に関わる移動自粛要請が発生したため、移管手続きや研究所間のサンプルのやり取りに関して多くの遅延が発生した。また、実験設備のセットアップも大幅に遅延しており、ウェット実験に置いては影響がでている。引き続き状況をみながら設備のセットアップや必要な出張(サンプル移動等)に関して、進めていく予定である。一方、発現遺伝子の比較など既に取得できたデータの解析作業はそれらの影響を受けないことから、ドライ実験に関しては影響を受けずに進めることができ、致命的な遅れには発展していない。
具体的には現在までに、予定していたデバイスのデザインとそれを活用した試行実験を完了し、等しく抗原刺激を受けた活性化T細胞集団において、運動性の高いT細胞と低いT細胞をその運動性により選別する系を構築する事ができた。特に、最終的なデバイスに至るまでには、全体的なデバイスのCADデザインはもちろん、T細胞の運動性を選別するための隔壁の検討を入念に繰り返し条件検討を行った。選別されたT細胞集団の特性を評価するために、独自の細胞評価方法も構築した。選別された細胞集団間でT細胞の標的傷害機能に関して、複数の明らかな差を観察することができたため、このデバイスを使用して選別された細胞集団間での遺伝子発現プロファイルの取得を行い、完了した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策に関しては提案時の計画から変更なく、以下の三段階を順次進めていく。
③運動性が高く障害能力が高いT細胞に優位に発現している遺伝子群から、実際に遊走能力や浸潤能力に影響を与え、固形がんにおける、免疫細胞療法の抗腫瘍効果を向上させることができる可能性の高い遺伝子をスクリーニングする。④スクリーニングした遺伝子を実際にT細胞に導入し、in vitroによる機能評価を試みる。⑤ ④において有望な遺伝子候補において in vivoによる機能評価を試みる。
今後、取得した遺伝子リストから導入する遺伝子の絞り込みを行い、3つほどに絞った上で導入ベクターをデザインし実際のT細胞に導入してin vitro の検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
京都大学から筑波大学への異動のため研究環境のセットアップに時間を要しており、予定していた物品の準備と購入が遅れている。また新型コロナウイルス感染症蔓延防止措置や関係機関の移動制限、面会制限などが影響し、予定していた出張の自粛や、学会のオンライン化の影響で国際学会を含む旅費に関しても使用できなかった。
新型コロナウイルス感染症の影響で依然、異動後の実験環境セットアップにも影響が出ている状況であるが、実験環境のセットアップが進み次第予定していた物品の購入を予定通り進めたいと考えている。 出張に関しても、制限の解除後に滞りなく再開したいと考えている。
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