研究課題/領域番号 |
20K16448
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研究機関 | 佐賀大学 |
研究代表者 |
中島 千穂 佐賀大学, 医学部, 助教 (40858502)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 肺がん / 免疫チェックポイント阻害薬 / cfNDA |
研究実績の概要 |
circulating free DNAの量・質と抗腫瘍免疫の関係性について、昨年度に引き続き、進行肺がん患者血漿を用いたcfDNAサイズ分布測定(Bioanalyzer high sensitivity kit)を行い、免疫チェックポイント阻害薬投与例について症例を蓄積中である。 上記の一環として、本学の社会医学講座との共同研究を行い、進行肺がん患者末梢血を用いてALDH2遺伝子多型を測定しrs671多型(*2)を持つ症例では、多型を持たない症例に比較して免疫チェックポイント阻害薬の治療効果が得られにくいことを発見した。具体的には、2016年から2019年にICI療法を開始した胸部悪性腫瘍の患者105例(肺腺癌 64例、肺扁平上皮癌 30例)におけるADLH2遺伝子多型を評価したところ、その49例がALDH2*2保因者であった。免疫チェックポイント阻害薬である抗PD-1/PD-L1療法に対する最良治療効果は、rs671(-)症例で部分奏功(partial response:PR) 36%、(stable disease:SD) 50%、(progressive disease:PD 14%であったのに対して、rs671(+)症例においては、それぞれ PR 27%、SD 29%、PD 45%であり、多変量解析の結果からもALDH2 *2多型の存在は、抗PD-1/PD-L1療法への低反応を低反応性を示す独立した因子であり、その成果について社会医学講座と共同でBMC cancer誌に論文発表を行った。また、上記研究の中で発見した免疫チェックポイント阻害薬を使用したのちに治療効果を得たものの特異な有害事象を生じた2症例について、自己免疫の活性化状況について測定の上、症例報告を投稿予定としている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症に対する診療面での負担が増え、研究活動に従事する時間的余裕が減少したこと、また学内の新型コロナウイルス感染症対策の一環として、学内研究機器について一時的に利用制限が設けられたことでcfDNAのサイズ分布解析が中断した経緯があったため。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き、進行肺がん患者血液を用いたlong fragment cfDNAの起源の探索のための前向き試験を勧めていく。また、培養液内への様々なcfDNAの添加により、細胞質内DNAセンサーであるcGAS/STING経路の活性化、結果としてのインターフェロンγの産生に変化が生じるかを、in Vitroで検討する予定である
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の遅れにより、2021年度に実施予定であった実験(Exosomal DNAの抽出、サイズ測定)を次年度に計画することとしたため。また、新型コロナウイルス感染症流行により学会出張を中止しており、次年度の感染状況を見ながら学会出張を再開する計画である。
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