研究実績の概要 |
循環血漿中のcell free DNA(cfDNA)の濃度が高い場合、DAMPsとして慢性炎症状態を作りだすことで免疫状態に影響を与え、悪性腫瘍患者においては免疫チェックポイント阻害薬の治療効果に影響を与えることを想定した。免疫チェックポイント阻害薬の使用歴がある進行期非小細胞肺癌患者の保存血清1mlを用いてMaxwell RSC ccfDNAキットによりcfDNAを抽出、Bioanalyzerを用いてshort/longを含めたcfDNAを測定し、電子カルテデータ(好中球・リンパ球比率、CRP、免疫チェックポイント阻害薬の治療効果、免疫関連有害事象の有無)について後方視的に検討した。我々の過去の検討において、cfDNAにはshort fragmentとlong fragment(腫瘍壊死や白血球崩壊による)が存在することを示しており、short/long fragmentの相関はR=0.589(p=0.00234)であった。short fragmentと炎症反応(CRP)の相関はR=0.245, p=0.236、Long fragmentにおいてはさらにR=-0.0938, p=0.654の結果でcfDNAと炎症の間に明らかな相関関係は認められなかった。免疫チェックポイント阻害薬の効果についてはlong fragmentにおいて、CR>PR>SD>PDで濃度が高い傾向を認めたが、統計学的にはp=0.642で有意差を指摘できなかった。さらに免疫チェックポイント阻害薬の治療効果に影響する因子を調べるため、組織また末梢血を用いて免疫プロファイリングを検討できるBoston Gene社のTumor portraitに患者検体を提出中である。またがんゲノム検査に基づく遺伝子異常の新規解析手法であるCancer Pathway Indexについても開発を行った。
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