研究課題/領域番号 |
20K16458
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研究機関 | 公益財団法人がん研究会 |
研究代表者 |
岡村 和美 公益財団法人がん研究会, がんプレシジョン医療研究センター 免疫ゲノム医療開発プロジェクト, 研究員 (80768630)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 養子免疫療法 / 腫瘍浸潤リンパ球 / リンパ節 / T細胞受容体 |
研究実績の概要 |
腫瘍浸潤リンパ球(TILs)を用いた養子細胞療法は進行期の悪性黒色腫の患者への有用性が報告されているが、大腸がん患者への効果は限定的である。がん自体の免疫原性だけではなく、TILの腫瘍微小環境下での機能不全なども原因の一つである。そのため、新たな細胞療法の細胞ソースとして手術により同時に摘出されるリンパ節に着目した。ただ、転移のないリンパ節では腫瘍反応性リンパ球は少ないことが予測され、細胞療法に用いるためにはそれらをenrichできるかが鍵となると考えられた。 まず、転移あり、なしのリンパ節からリンパ球を培養し、本人の腫瘍組織から樹立した腫瘍細胞株と反応させ、IFNγの産生をELISPOTで評価した。その結果、一部のサンプルでは転移のないリンパ節から培養したリンパ球においてもIFNγの産生がみられたが、それ以外においては転移のあるものでしか認めなかった。ここで、自身の腫瘍細胞と2週間共培養し、T細胞受容体のレパトア解析を行った結果、TILsと同様のT細胞受容体クロノタイプをもつリンパ球を体外で増幅させることに成功した。また一部のサンプルではIFNγの産生も亢進した。次に手術時に摘出された転移のないリンパ節をそのままsingle cell suspensionし同様の実験を行った。4人の患者から得られたサンプルを用いて行い、少なくとも一つ以上のリンパ節から腫瘍反応性T細胞が増幅しており、レパトア解析の結果からTILと同様のT細胞受容体を持つリンパ球が増加している事が判明した。以上のことより転移のないリンパ節においても体外で特異的に腫瘍反応性T細胞を増幅させることが可能であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
所属リンパ節中での腫瘍反応性T細胞の証明、またリンパ節中の腫瘍反応性リンパ球が腫瘍抗原により特異的に増幅させることができることが証明された。 まだ、試みたサンプル数は少ないが細胞傷害活性も増強することが可能であった。
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今後の研究の推進方策 |
腫瘍反応性リンパ球をどの程度増幅させられるかは患者間、またリンパ節間で差がみられている。これらの差を生み出す原因を検索することが、より効率的、また機能的に優れた腫瘍反応性T細胞を体外で増幅させられるかどうかの重要なポイントになると思われる。また、サンプル数は少ないが培養条件などによる表現型の差がみられることも判明した。今後は、増幅したリンパ球の表現型などに関してより詳細に検討していく予定である。
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