腫瘍浸潤リンパ球(TILs)を用いた養子細胞療法は新後期の悪性黒色腫の患者への有用性が報告されているが、大腸がん患者への効果は限定的である。がん自体の免疫原性だけでなく、TILの腫瘍微小環境下での機能不全なども原因の一つである。そのため、新たな細胞療法の細胞ソースとして手術に同時に摘出されるリンパ節に着目した。ただ、転移のないリンパ節では腫瘍反応性Tリンパ球は少ない事が予測され、細胞療法に用いるためにはそれらをenrichできるかが鍵となると考えられた。4人の患者において転移のないリンパ節から得られたリンパ球を患者本人の腫瘍組織から樹立した腫瘍細胞株と反応させ、IFNγの産生をELISPOT assayで評価した。この結果、Lynch症例である1例を除くリンパ節由来のリンパ球は腫瘍反応性を示さなかった。しかし、腫瘍細胞と2週間特定の条件下で共培養することにより、腫瘍反応性リンパ球をin vitroで増殖させ得ることが判明した。また、増殖したTリンパ球のTCRのレパトア解析を行ったところ、腫瘍反応性を示した2つのサンプルではTILと同様のTCRを持つリンパ球の増加がみられ、また腫瘍反応性を示した各々のリンパ節間では共有するTCRを持つことも判明した。腫瘍反応性CD8T細胞をenrichできなかったサンプルについて検討したところ、樹立した腫瘍細胞株のHLA classIIの発現の低下がみられ、CD4の活性化及び、Th1への誘導が障害されていることも判明した。以上の事より、転移のないリンパ節においても体外で腫瘍反応性T細胞を増殖させることが可能であり、新たな細胞療法の細胞ソースとして用いることができる可能性が示された。
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