研究課題/領域番号 |
20K16460
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研究機関 | 国立研究開発法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
渡邊 慶介 国立研究開発法人国立がん研究センター, 研究所, 主任研究員 (60847466)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | キメラ抗原受容体 / CCR4 / 成人T細胞白血病 |
研究実績の概要 |
PDXモデルにおけるCCR4CART細胞機能の評価:PDXモデルにおける評価の予備実験として、ヒト由来T細胞株ゼノグラフトモデルにて、樹立したCCR4CART細胞の機能評価を行い、治癒を含む良好な抗腫瘍活性と、生存期間の延長を認めた。また、ヒト由来細胞取得に関し必要な倫理審査を完了した。 同系腫瘍移植マウスモデルでのCCR4CART細胞機能・有害事象の評価:同系CART細胞樹立のため、2種類のマウスCCR4CART細胞の樹立を進めている。リガンドベースのCARとして、CCL17、および、CCL22をヒンジを介し、マウス4-1BB,マウスCD3-z鎖に結合した抗CCR4CARを構築した。また、ファージディスプレイを用いた抗マウスCCR4抗体の樹立をすすめており、ビーズベースの複数CCR4ベイト、および、マウスCCR4発現細胞株を樹立した。今後、抗CCR4抗体の取得・同定を進める。 臨床応用へ向けたCCR4CART細胞試験樹立:臨床応用時の安全性担保のため、CAR下流へP2Aシーケンスを配し自殺遺伝子を組み込んだプラスミドベクターを作成した。同コンストラクトを用いて、レンチウイルスおよびレトロウイルスを用いてCART細胞を樹立し、高い遺伝子導入効率、増幅効率、CART細胞の細胞傷害活性を確認した。また、樹立したCART細胞は効率よく、ゼノグラフト腫瘍を抑制することを確認した。自殺遺伝子の作動を確認するため、フラスコ内で作動薬を様々な濃度にて作用させ、患者血中にて達成可能な濃度にて有効にCART細胞死を誘導できることを確認した。以上より、同コンストラクトを臨床応用にもちこむ最終コンストラクトとして決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PDXモデルにおけるCCR4CART細胞の機能評価: ヒト由来T細胞性腫瘍を用いた予備検討が完了し、CART細胞の良好な抗腫瘍活性や生存の延長など基礎的データの取得が終了した。一方で、実際のPDX樹立にはいたっていない。しかしながら、ヒト由来細胞取得に関し必要な倫理審査を完了し、診療科の協力のもと、ヒト由来細胞株を取得する準備が完了したため。 同系腫瘍移植マウスモデルでのCCR4CART細胞機能・有害事象の評価: 予定しているCART細胞設計のうち、リガンドベースのCARの構築が完了した。また、抗マウスCCR4抗体の取得は順調に進行しており、まもなく、候補抗体群の取得に移る予定であるため。 臨床応用へ向けたCCR4CART細胞試験樹立: 自殺遺伝子導入後のCART細胞においても、当初の想定どおりの抗腫瘍活性が認められた。また、複数回の実験にて、患者で達成可能な誘導薬濃度で有効に自殺遺伝子が発動することが確認できた。最適化においては、当初の予定通り、臨床応用可能な各種サイトカインの組み合わせなど、培養条件の検討が完了したため。
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今後の研究の推進方策 |
PDXモデルにおけるCCR4CART細胞の機能評価: 患者由来腫瘍細胞をNSGマウスに生着させPDXモデルを得る。CART細胞の効果を、腫瘍量の変化、マウスの生存、T細胞の生着にて評価する。T細胞の腫瘍内への浸潤、腫瘍内での機能を明らかにするため、数群から治療後一週~数週目に腫瘍を摘出、腫瘍内サイトカイン組成、T細胞の浸潤数、活性化/疲弊マーカーの発現をLuminexアッセイ、フローサイトメトリ (FCM)、免疫組織染色 (IHC)にて検討する。 同系腫瘍移植マウスモデルでのCCR4CART細胞機能・有害事象の評価:今年度作成したリガンドベースのCCR4CART細胞、および、取得予定の候CCR4抗体を用いてマウスT細胞由来抗マウスCCR4CART細胞を樹立する。CCR4陽性RENCA腫瘍を移植したマウスを、同マウスCCR4CART細胞にて治療し、抗腫瘍効果、生存を観察する。また、一群のマウスから腫瘍を採取し、CART細胞の浸潤のほか、宿主由来T細胞、マクロファージ、骨髄球系細胞、制御性T細胞など、腫瘍免疫環境を詳しく解析する。 臨床応用へ向けたCCR4CART細胞試験樹立: ATLLもしくはCTCL患者からPBMCを分離し、CD19CART細胞の製造で実績のある抗CD3/28ビーズとレンチウイルスを用いた方法を基本にGMPグレードでの試験製造を行う。CD19CART細胞を対照とし、CCR4CART細胞の遺伝子導入効率、製造効率)とともに、製造産物の表現型(CCR7, CD45ROによるメモリー表現型やT-bet、EOMES, ROR-gt, FoxP3などによるヘルパーT細胞サブセット)、T細胞疲弊化マーカー(PD1、Tim3、LAG3)の発現、および、最大刺激によるサイトカイン産生能を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウス抗CCR4抗体の取得に想定より時間を要しており、マウスCCR4CART細胞モデル作成が次年度へずれこむため。
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