研究課題/領域番号 |
20K16465
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研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
間島 慶 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 量子生命科学領域, 研究員(任常) (80735770)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 機械学習 / 量子計算 / 量子インスパイア / 量子機械学習 / 主成分分析 / 正準相関分析 / 多変量解析 / 高次元データ |
研究実績の概要 |
多変量データの解析を行うための統計手法である主成分分析・正準相関分析の高速化を行った。高速化のために、先行研究において量子コンピュータ用の機械学習アルゴリズム(量子機械学習アルゴリズム)の研究過程から生まれた計算技法、量子インスパイアアルゴリズムを用いた。通常の主成分分析・正準相関分析は入力となるデータの次元数(変量の数)に対し3乗のオーダーで計算時間が増加するが、量子インスパイアアルゴリズムの導入により、オーバーヘッドを除く主要な部分の計算時間を対数オーダーに抑えることができた。 シミュレーションデータを用い、計算時間を計測する実験を行い、我々の実装したアルゴリズム、量子インスパイア主成分分析・正準相関分析によって大幅に計算時間を削減できることが確認できた。具体的には数十万-数百万次元のデータであっても汎用的なクラスタ計算機上で数百秒程度の計算時間で実行可能であった。通常の主成分分析を用いた場合、同じデータに対し数日かけても計算が完了しないことから、今後高次元データ、特に高解像度脳データを解析する上で有用と考えられる。 また、量子インスパイアアルゴリズムは近似であるため、厳密な主成分分析・正準相関分析に対する性能の低下の度合いを実データにおいて検証した。検証を行った5つの実データに対しては、精度の低下は7%程度以下であった。 上記の結果は論文としてまとめ査読付き国際論文誌(Neural Networks)に採録された。また国内における学会発表を2件行った(量子生命科学会、量子ソフトウェア研究会)。Github上での開発コードの公開も行い、コンタクトのあった複数の研究者と応用可能性についてさらなる議論を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
会議・議論のミーティングのリモート化が進んだため、共同研究者と当初の期待以上にスムーズに研究を進めることができた。特に計算機実験に関しては計算機環境の準備が予想より早く進行したため、当該年度前半に主な解析作業に入ることができた。計画では計画2,3年度目に主な成果の論文発表を予定していたが、そのうちの1つ目を初年度内に発表することができた。また、学会のリモート化・オンライン化も進んだため、日程の都合で参加を見送る機会が減り、発表も初年度中に行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降は別の方式の量子インスパイアアルゴリズムを用いた機械学習手法の開発に着手するとともに、開発した量子インスパイア主成分分析・正準相関分析を実際のデータ解析、特にヒト・サルの高次元脳データや精神疾患患者の行動データの解析に応用していく。データを計測する共同研究者との連携を緊密に行うため、異動を済ませ、連携体制の準備を2020年度後半より進めており、引き続きこれを進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
国際会議、またそれに伴う出張が中止されたため、当初それらに使用する予定の予算を、翌年度以降に延期され開催されるものに使用するため。
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