本研究課題では、患者さんの負担なしに比較的大量に計測できる自由行動下での皮質脳波を用いてDeep Neural Network (DNN)モデルを学習し、視覚認知課題時の皮質脳波からの視覚認知内容の推定精度向上を試みた。 まず、皮質脳波の波形特徴を捉えるためのDNNモデルをAutoencoderモデルを元に開発した。次に、この開発したモデルを複数の被験者から計測した自由行動下での皮質脳波(合計10時間)を用いて教師なしで学習した。学習したモデルを別の被験者の視覚認知課題時に計測した皮質脳波の特徴量抽出器として用い、得られた特徴量をSupport Vector Machine (SVM)で刺激種別を弁別したところ、有意な弁別精度を得た。また、この精度は既知の特徴量であるパワー特徴量に対してSVMを適応した時の精度と比較しても高いものであった。すなわち、本研究課題の目標を達成することができた。また、この結果から、自由行動下での皮質脳波から学習された波形特徴は、課題遂行時の皮質脳波においても有効な波形特徴であることが明らかになった。 さらに、同DNNモデルを行動課題にも適応したところ、SVMを用いて課題内容を識別する精度は、抽出された特徴量を用いた場合とパワー特徴量を用いた場合で同程度であった。行動課題の場合は精度の向上こそ得られなかったものの、この結果は、同DNNモデルが学習した波形特徴は,視覚認知課題だけにとどまらず種々の課題遂行時の脳波の波形特徴として有効な汎用的な特徴であることを示唆している。
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