|
動物は発声など様々な感覚信号を用い、時にはそれらを組み合わせてコミュニケーションを行う。小鳥の一種ブンチョウは、群れの中で多様な発声によりコミュニケーンをとり、さらにオスは、親鳥から歌を学習し、学習した歌と身体運動を組み合わせて求愛を行う。本研究は、発声や発声と身体運動を組み合わせたコミュニケーション行動がどのように出力されるのか、また、どのように受け手側に受容されるのか、その神経機構を明らかにすることを目指した。
ブンチョウの求愛行動中の頭部の動きと求愛歌を解析した結果、跳躍運動は歌を伴わない場合よりも、歌と組み合わせて行う場合に速くなることがわかった。歌の時系列の制御に関わる脳領域を一過的または永続的に抑制すると、求愛行動自体が抑制される場合と、歌のみが変化する場合が観察された。当該領域は、歌と身体運動野協調に関与しない可能性が示唆された。
ブンチョウが群れの中で頻繁に繰り返される発声により社会的絆を構築・維持したり、複雑な音配列を学んだりすることから、ミスマッチ聴覚応答が見られるかを検証した。ミスマッチ聴覚応答は、ヒトで報告されている事象関連電位のひとつで、一定の規則的な音配列の中で予期せぬ逸脱した音刺激にさらされた際に起こる神経応答であり、聴覚情報・記憶処理や構文処理に関わる神経活動であると考えられている。実験の結果、高次聴覚領域において人工的な純音や自然な発声、さらに3つの音の組み合わせパターンについて、ミスマッチ聴覚応答様の活動が観察された。これらの研究結果を国際誌に発表した。
|
