本研究によって、新規PTSDモデルとしての社会的敗北ストレス処置誘導性トラウマ記憶の理解が進んだ。これまでPTSDモデルとして広く用いられた古典的恐怖条件付けと比較して、社会的敗北ストレス処置では恐怖記憶に伴う精神異常が観察される点が異なる。本研究から、社会的敗北ストレス処置によって、恐怖条件付けと同じく新規遺伝子発現依存的に恐怖記憶が形成されることが示され、さらに慢性ストレスによる精神異常がこの恐怖記憶痕跡細胞と関連する可能性を示した。以上から、PTSDモデルとしての社会的敗北ストレス処置の有用性が示された。本処置を用いることでPTSDの新規治療法開発が進むことを期待する。
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