研究実績の概要 |
大変な仕事を今すぐにするか、後でするか。日常的なこの選択は、遅延努力コストに基づく意思決定の問題と捉えることが出来ます。例えば、難しいレポートを書かなければならないのに、先延ばしにしてつまらない仕事を処理し、大変な仕事が溜まってしまう。このような選択の結果、期日に間に合わず、成功を逃してしまうかもしれません。経済学では、報酬や金銭的損失の時間割引はよく知られています[Thaler & Shefrin, 1981; Laibson, 1997; Rangel et al., 2008; Tanaka et al., 2004]。一方で,痛みや報酬情報の価値が時間割増されることが報告されています[Berns et al., 2006; Iigaya et al., 2020]。先行研究では、努力コストの大きさと遅延努力コストの時間割引・割増は考慮されておらず、これらがが先延ばし行動に影響を与えるかどうか検討されてきませんでした。頭を使うことで生じる認知的な努力コストは、時間によって割り引かれるのでしょうか?この問いを検証したところ(n = 21)、ヒトは秒単位の時間の違いに気づかずに、すぐに負荷課題を実行する選択肢(即時コスト)を好むコストの時間割増傾向があることがわかりました(Nagase et al. presented at Society for Neuroeconomics2019)。その後の行動実験(n = 9)の結果でも、上記の傾向が再現されています。 本年度は、認知的な遅延努力コストに基づく意思決定課題を新規に開発し、行動実験と機能的磁気共鳴画像法と質問紙調査を含めた実験計画を倫理委員会に申請し、承認を得ました(認知課題と意思決定 ~個人差の研究~(課題番号:20A107)、認知課題と選択2(課題番号:20A093)、認知課題と選択3(課題番号:20A094))。
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