研究課題/領域番号 |
20K16488
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
祖父江 顕 名古屋大学, 環境医学研究所, 特任助教 (80823343)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 神経炎症 / ミクログリア / アルツハイマー病 |
研究実績の概要 |
認知症の主要な原因疾患であるアルツハイマー病(Alzheimer’s disease; AD)の中核となる病理は、アミロイドβ(Aβ)・タウ蛋白の異常蓄積であり、これらは神経変性につながる主要因子である。本疾患における現行の治療薬はこれらの因子の制御ではなく対症療法の域に留まっている。従って、本疾患の病因と病態関連シグナルを明らかにし、病態に即した革新的治療法を開拓するための基盤整備が必要である。AD脳の老人斑に集簇するグリア細胞の一種であるミクログリアは、Aβクリアランスや神経炎症に寄与し、ADの病態に関与することが注目されている。このような背景から、本研究ではi)AD患者脳、各種ADマウスのグリア細胞における共通遺伝子発現プロファイルの作成と解析およびii)AD患者脳およびADマウスのグリア細胞にて共通して変動していた因子CB2を介した炎症反応調節機構とAβクリアランスへの影響について解析を行う。 今年度はi)においてはAPP knock-in(App-KI;アミロイド病理を呈する)、rTg4510(タウ病理および神経細胞死を呈する)マウスの大脳皮質から単離したミクログリアにおける遺伝子解析を次世代シークエンスにより行い、ミクログリアの生理機能に関わる遺伝子群の発現は神経変性の程度と相関することを見出した。また、早期AD病理と診断された死後脳の楔前部を用いた遺伝子解析の結果についてもミクログリアおよびオリゴデンドロサイト関連遺伝子発現の低下が確認できた。これらのデータをまとめて論文化も完了している。さらに、ii)においてはApp-KIマウスに対してCB2の作動薬であるJWH133を連続飲水投与を行い、新奇物体認知試験により認知機能の改善を確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各ADモデルマウスにおけるミクログリアを用いてミクログリアの生理機能に関わる遺伝子群の発現が有意に低下が神経変性の程度と相関することを見出し、一方でヒトAD病理脳においてもミクログリアやオリゴデンドロサイトなどグリア細胞関連遺伝子の発現低下が早期から見られることを明らかにした。これらのことをまとめて論文化することができた。さらに、App-KIマウスにおける認知機能の低下をJWH133の処置により有意に改善することが明らかとなり、認知機能に対するJWH133の有効性を確認することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
今後は「AD患者脳、各種ADマウスのグリア細胞における共通遺伝子発現プロファイルの作成と解析」については、各ADモデルのミクログリアから抽出した遺伝子変動プロファイルとAD病理脳を用いて作製した遺伝子変動プロファイルを比較解析し、早期に変動する遺伝子群を抽出し、新たなAD治療標的の探索を進めていく予定である。また、「CB2を介した炎症反応調節機構とAβクリアランスへの影響」については引き続き5ヶ月齢のAPP-KIマウスにJWH133の連続飲水投与を実施し、行動解析の追加実験を行う。さらに、行動解析後のマウス脳サンプルについて磁気細胞抽出法により各種グリア細胞を抽出して炎症性サイトカインの発現量を細胞特異的に解析することで目標としてきた「CB2を介した炎症反応調節」を達成する予定である。また、Aβクリアランスについてはウエスタンブロットあるいは組織免疫染色法で大脳皮質におけるAβの蓄積量変化を解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費については当研究室にある物品で実験を遂行することができ、旅費については学会のほとんどがWeb開催であったことから次年度使用額が生じた。次年度では認知機能解析の追加実験や組織学的解析を実施するため、次年度使用額を用いる予定である。また、旅費については今年度のコロナの状態にも依存するが、現地開催・ハイブリット開催の場合に次年度使用額を用いる予定である。
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