認知症の主要な原因疾患であるアルツハイマー病(Alzheimer’s disease; AD)の中核となる病理は、アミロイドβ(Aβ)・タウ蛋白の異常蓄積であり、これらは神経変性につながる主要因子である。本疾患における現行の治療薬はこれらの因子の制御ではなく対症療法の域に留まっている。従って、本疾患の病因と病態関連シグナルを明らかにし、病態に即した革新的治療法を開拓するための基盤整備が必要である。AD脳の老人斑に集簇するグリア細胞の一種であるミクログリアは、Aβクリアランスや神経炎症に寄与し、ADの病態に関与することが注目されている。このような背景から、本研究ではi)軽度AD病理脳、各種ADマウスのグリア細胞における共通遺伝子発現プロファイルの作成と解析およびii)軽度AD病理脳およびADマウスのグリア細胞にて共通して変動した因子であるカンナビノイド受容体II型(CB2)を介した炎症反応調節機構とAβクリアランスへの影響について解析を行う。
今年度はApp-KIマウスに対してCB2アゴニストであるJWH133を連続飲水投与を行い、オープンフィールド試験を実施し、神経系のCB2への影響を解析した結果、情動や自発運動量についてはほとんど影響が認められなかった。さらに、組織学的解析ではJWH133を投与したApp-KIマウス脳において、抑制性神経伝達物質の受容体であるGABAα1と神経栄養因子であるBDNFの発現低下を有意に改善することが明らかとなった。 また、これまでの結果をまとめて論文投稿を行った。
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