研究課題/領域番号 |
20K16491
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研究機関 | 滋賀医科大学 |
研究代表者 |
渡邊 直希 滋賀医科大学, 神経難病研究センター, 助教 (60769339)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / Amyloid-β / ILEI / 遺伝子発現制御 / 老年期認知症 |
研究実績の概要 |
[a] ILEI転写制御機構と老化に伴う発現低下機構の解析 ILEI遺伝子プロモーター領域および転写因子の同定に関して、転写開始点上流領域をBACからサブクローニングし、Lucレポーターアッセイにてプロモーター活性を示す領域を絞り込んでおり、非神経系HEK293、神経系SH-SY5Y、マウス初代培養ニューロンに共通していた。この領域をゲノム編集CRISPR/Cas9により欠損させ、細胞内転写発現様式の制御にこの領域が必要十分か否かをILEI発現にて検証した。さらに、上記の転写活性領域のDNA配列を元に複数のデータベース検索から転写因子候補を見出し、培養細胞にてノックダウンおよび強制発現を行った。 [b] 脳ILEI発現低下がAD発症のリスク要因であることの検証 App(NL-F);ILEI-icKOマウスの解析に関しては、Tam誘導性かつ前脳領域の神経細胞に特異的なCaMKIIプロモーター下にCre発現を誘導することによりILEI遺伝子を欠失できるILEI-icKOマウスを作出し、さらにSwedish + Iberian変異型ヒト化APPノックイン(App(NL-F))マウスと交配した。脳ILEI発現レベルは出生直後に最も高く、その後は徐々に減少することから、発生への影響を避けるため、成熟後にTam投与を行った。3ヶ月齢および6ヶ月齢のApp(NL-F/NL-F);CaMKII-iCreERT2 (+/-);ILEI(flx/flx)マウスおよびコントロールマウスにTam投与し、14か月齢にてAβ免疫組織染色およびELISAを実施したところ、App(NL-F/NL-F);ILEI-cKOでAβ沈着の増加が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
[a] ILEI転写制御機構と老化に伴う発現低下機構の解析 ILEI遺伝子プロモーター領域および転写因子の同定に関して、転写開始点上流領域をLucレポーターアッセイにてプロモーター活性を示す領域を絞り込んでおり、この領域をゲノム編集CRISPR/Cas9により欠損させ、細胞内転写発現様式の制御にこの領域が必要十分か否かをILEI発現にて検証できた。さらに、上記の転写活性領域のDNA配列を元に複数のデータベース検索から転写因子候補を見出し、培養細胞にてノックダウンおよび強制発現を行うことができた。 [b] 脳ILEI発現低下がAD発症のリスク要因であることの検証 CaMKII-CreERT2、ILEI-floxed、App(NL-F/NL-F)マウスの3系統を交配した個体の繁殖が順調に進んでおり、Tam投与によりILEIをコンディショナルノックアウトできることを確認でき、さらにAβ沈着の増加も確認された。
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今後の研究の推進方策 |
[a] ILEI転写制御機構と老化に伴う発現低下機構の解析 ILEI遺伝子プロモーター領域および転写因子の同定に関して、特定したILEI発現制御領域とILEI制御因子候補との結合をゲルシフトアッセイにより確認したところ、2つの因子で制御領域との結合を確認する。 加齢やADにおける転写活性低下の解析に関しては、今後、剖検脳から核タンパク質を抽出し、各転写因子候補の発現量変化を調べるなど、転写因子からの要因を検討する。 [b] 脳ILEI発現低下がAD発症のリスク要因であることの検証 App(NL-F/NL-F)マウスでは10か月齢に大脳皮質のAβ沈着が始まり、12か月齢から記憶障害が検出可能とされる。Aβ沈着が始まる前の3、6か月齢に加え、Aβ沈着が始まった後の時期の9か月齢にTam投与を行い、その影響を確認する。加えてY字迷路、運動量測定などの行動実験を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で物品の納品が遅れているため、次年度使用額が生じた。次年度の早い時期に使用する見込みである。
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