ILEI転写開始点上流領域のLucレポーターアッセイより転写活性領域は転写開始点ごく上流付近の2か所で、非神経系HEK293、神経系SH-SY5Y、マウス初代培養ニューロンで共通だった。この配列から複数のデータベース検索で転写因子を探索し、培養細胞でノックダウン(KD)及び強制発現(OE)を行い、SP1、EBF1が候補となった。この領域をゲノム編集CRISPR/Cas9により欠損させると、内在性ILEI発現は低下し、SP1、EBF1等のKD、OEでも変化しなかった。EMSA及びChIP-qPCRから、特定した発現制御領域とSP1、EBF1との結合を確認した。網羅的RNA-seq解析から、アルツハイマー病(AD)剖検脳のILEI mRNAレベルの低下が確認できた。前頭葉皮質の神経細胞核をFACSで回収し、ILEI遺伝子メチル化を評価したが、AD脳に特有のパターンは認められなかった。AD脳の核タンパク質抽出物では、SP1、EBF1発現量が減少し、剖検脳を用いたEMSAおよびChIP-qPCRから、AD脳でSP1、EBF1とILEI発現制御領域の結合能低下が見られた。 App(NL-F);ILEI-cKOマウス解析のため、タモキシフェン(Tam)投与で神経特異的CaMKIIプロモーター下でILEI欠損誘導できるILEI-cKOマウスを作製し、さらにADモデルマウスApp(NL-F)と交配した。3か月齢および6か月齢のApp(NL-F);ILEI-cKOマウスにTam投与し、14か月齢にてAβ免疫組織染色およびELISAを実施したところ、Aβ沈着の増加が認められ、3か月齢にTam投与を行った方がAβ沈着増加は大きかった。9か月齢のTam投与では有意差はなかった。さらに、Y字迷路で短期の作業記憶を測定したところ、10か月齢からalternationが有意に減少した。
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