CHCHD2 P14L、-8T>G変異を有する患者の脳病理の解析でTDP-43 proteinopathyを認めていた。またP14L変異を有する患者では健常者と比較し、CHCHD2とミトコン ドリア抗体(ATP5A)との蛍光二重染色で、CHCHD2がミトコンドリアの局在から外れる傾向を認めていた。患者脳を用いたサルコシル不溶性分画のウエスタンブロット(WB)では、P14L変異患者でCHCHD2とCHCHD10(過去にCHCHD10はALSの原因遺伝子として報告されている)の発現低下を認めていた。 CHCHD2 KOのSH-SY5Y細胞にレトロウイルスでWT、P14L、T61Iのベクターを導入し、それぞれの遺伝子の安定発現細胞を樹立した。これらの細胞を用いて、CHCHD2 とATP5Aとの蛍光二重染色と、ミトコンドリア、核、細胞質の分画をした上でWBを行なった。その結果、CHCHD2 P14Lがミトコンドリアの局在から外れる傾向を認 めており、脳病理の結果と一致していた。またTDP-43の過剰発現を行ない、サルコシル不溶性分画のWBを行なったところ、CHCHD2 KO、CHCHD2 P14Lでリン酸化 TDP-43の高発現を認めていた。SH-SY5Y細胞で作製した変異体と同じ遺伝子型をもつDrosophilaでは、CHCHD2 KOのDrosophilaでTDP-43が蓄積する傾向にあった。またP14L変異を持つDrosophila では、T61I変異を持つDrosophilaよりも、早期にCHCHD2がミトコンドリアから細胞質へと局在が外れる傾向にあった。また、P14L変異を持つDrosophilaではミト コンドリアのCa2+流入の低下と細胞質への流入上昇を認めており、運動ニューロン内のCa2+濃度が上昇することで神経毒性を持ち、ALSを発症する可能性があると考えられた。
|