研究課題/領域番号 |
20K16505
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
太田 真 大阪医科大学, 医学部, 助教 (70816751)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 神経変性疾患 / 病態生化学 / 細胞生物学 / 細胞外分泌 / αシヌクレイン / パーキンソン病 |
研究実績の概要 |
本研究課題は、MAO-Bノックダウン培養細胞およびMAO-Bノックアウトマウスを用いて、MAO-B欠損によるαシヌクレインの神経毒性・凝集体形成に対する緩和効果と作用機序の解明を目的としている。初年度の実験計画として、培養細胞を用いた実験でMAO-Bの発現抑制が、1)αシヌクレインの発現および代謝に影響するか、2) 細胞外へのαシヌクレイン分泌に影響するかを設定した。SH-SY5Y細胞を用いて実験を行い、1)ラサギリン等のMAO-B阻害薬処理はαシヌクレイン細胞外分泌を亢進させる、2)ラサギリンより酵素活性が1000倍以上低いS型異性体による処理はαシヌクレイン細胞外分泌を亢進させない、3)siRNAノックダウンによるMAO-B発現抑制は、αシヌクレイン細胞外分泌を亢進させる、4)MAO-B阻害薬処理に伴うαシヌクレイン細胞外分泌亢進は、小胞体・ゴルジ装置非依存性経路を介する、5)MAO-B阻害薬処理に伴うαシヌクレイン細胞外分泌の亢進は、ABCトランスポーター阻害薬によって抑制される、6)MAO-B阻害薬処理に伴うαシヌクレイン細胞外分泌亢進は、ライソゾーム阻害で生じた不溶性αシヌクレインを優先的に分泌する、といったことを見出した。これらの所見は、MAO-B酵素活性阻害は、ABCトランスポーター含む小胞体・ゴルジ装置非依存性経路を介してαシヌクレインの細胞外分泌を亢進させ、不溶性αシヌクレインのクリアランスに影響することを示唆している。MAO-B阻害の新しい作用を示唆するものと考えられる。今後、飼育中のMAO-B ノックアウトマウスを用いて、MAO-B欠損が、1)αシヌクレインよって惹起される黒質ドパミン神経細胞の脱落を抑制するか、2)αシヌクレインの凝集体形成に影響を与えるか、3)運動機能、線条体ドパミン含量に効果を及ぼすかを解析する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
米国Jackson研究所からのMAO-Bノックアウトマウス購入に時間を要し、マウスを用いた実験が送れているため。
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今後の研究の推進方策 |
SH-SY5Y細胞株で得られた所見を総括し、MAO-Bノックアウトマウスを用いた研究を行う。2021年5月にMAO-Bノックアウトマウスが入荷されたので、今後、個体数の確保に努め、準備出来次第、MAO-B欠損が、1)αシヌクレインよって惹起される黒質ドパミン神経細胞の脱落を抑制するか、2)αシヌクレインの凝集体形成に影響を与えるか、3)運動機能、線条体ドパミン含量に効果を及ぼすかを解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
米国Jackson研究所からのMAO-Bノックアウトマウス購入に想定以上の時間を要したため、マウス購入費用を納入まで保留せざる得なかった。2021年5月にMAO-Bノックアウトマウスが納入されたので、飼育費用、アデノ随伴ウイルス接種に関わる費用への支出を計画している。
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