研究課題/領域番号 |
20K16508
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
田中 良法 岡山理科大学, 獣医学部, 助教 (00747933)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | progranulin / 解糖系 / TDP-43 |
研究実績の概要 |
ハプロ不全によって前頭側頭葉変性症を生じる原因タンパク質であるプログラニュリンの機能を調べるために、質量分析で同定した相互作用候補因子の中から、リソソームのpHを調節するものを選択し、その機能を調べた。候補タンパク質Aを神経芽細胞腫SH-SY5Yに過剰すると、PGRNを過剰発現した際と同様にリソソームの酸性度が高まった。PGRNの過剰発現によるリソソーム酸性度の亢進は、このタンパク質Aの発現を抑制した条件下では生じなかった。したがって、PGRNはタンパク質Aを仲介してリソソームを制御している可能性が考えられた。このタンパク質Aの活性を高める薬物を細胞に投与すると、濃度依存的にリソソームの酸性度を高めた。タンパク質Aがリソソームへ与える影響を多角的に調べるために、オートファジー・リソソーム系構成タンパク質の遺伝子発現を制御する転写因子TFEBにGFPが付加した融合タンパク質を安定発現する細胞を用いて検討を行った。タンパク質Aの発現抑制によって、TFEB-GFPの脱リン酸化が促進し、核移行が増加した。この結果から、タンパク質Aの発現が低下すると、リソソームの機能低下が生じるため、相補的にオートファジー・リソソーム系のタンパク質合成が促進されることが示唆された。さらに、リソソーム膜タンパク質であるLamp1にGFPが付加した融合タンパク質を安定発現する細胞を用いて、タンパク質Aがリソソームに与える影響を検討した。タンパク質Aを発現抑制すると、リソソーム腔が拡張し、Lamp1-GFPが蓄積した。さらに、タンパク質Aがオートファジーに与える影響についても検討した。タンパク質Aの過剰発現によって、オートファジーの流れが促進し、発現抑制によって、オートファジーの流れが遅延した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プログラニュリンと相互作用する候補因子の中から、オートファジー・リソソーム系を制御する因子を同定することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
PGRNとタンパク質Aがいつ出会い、どのように相互作用してリソソーム機能を調節するのかが今後の課題となる。課題解決のために、タンパク質Aの変異体を作製するなどして、PGRNとタンパク質Aがリソソームを制御する機構の解明に迫りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の流行により、学会発表や研究打ち合わせなどの出張がなくなったため、旅費として使用予定であった研究費を物品費として使用した。次年度は論文投稿を予定しているため、論文掲載費などに使用する。
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