研究課題/領域番号 |
20K16508
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
田中 良法 岡山理科大学, 獣医学部, 助教 (00747933)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プログラニュリン / 解糖系 / 乳酸 / リソソーム / オートファジー |
研究実績の概要 |
CRISPR-Cas9法によって作出した、ヒトの遺伝子変異を模倣したプログラニュリン(PGRN)ノックアウトマウスを使用した最近の研究では、相同組換えで作出したマウスよりもTDP-43蓄積などの表現型が鮮明に出ている様に感じられた。そこで、我々もCRISPR-Cas9法を応用したiGONAD法を用いて、フレームシフトによってPGRN遺伝子発現が欠損する新たなPGRNノックアウト(KO)マウスを作製した。次に、野生型マウスと今回作製したKOマウスから得られた胎児線維芽細胞(MEF)を用いて、リソソーム酸性化を比較した。KOマウスから得られたMEFでは、野生型マウスから得られたMEFと比較してリソソーム酸性化が低下していた。このリソソーム酸性化の低下に解糖系が関与しているか調べるために、解糖系の代謝産物である乳酸産生について調べた。KOマウス由来のMEFはWTマウス由来のMEFと比較して、乳酸産生が低下していた。一方で、ミトコンドリアの膜電位についてはWTマウスとKOマウス由来のMEFで差が認められなかった。PGRN産生低下によって、解糖系とリソソーム酸性化に異常が生じることが強く示唆された。 また、オートファジーに与える影響も解析した。siRNAによるPGRNの発現低下、PGK1の発現低下は、オートファジーマーカーであるLC3-IIの蓄積を共に増加させた。一方で、オートファゴソームとリソソームの阻害剤であるbafilomycinA1存在下では、いずれの場合もLC3-IIの蓄積に影響を与えなかった。したがって、PGRNの発現低下とPGK1の発現低下は、共にオートファゴソームとリソソームの融合を抑制する可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
PGRNの産生低下によって、解糖系とリソソーム機能が低下することが示唆された。昨年度に、解糖系の阻害によってオートファジー・リソソーム系の機能が低下することと合わせて考えると、PGRNによるオートファジー・リソソーム系の機能低下は解糖系の機能低下に仲介される可能性が考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の最も重要な課題は、PGRNがどのように解糖系の制御を行なっているかを明らかにすることである。そのために、必要な実験材料(DNAコンストラクトなど)を用意することを第一の目標とする。一方で、PGRNの欠如は神経系の疾患の原因となるため、神経細胞や脳での解析が必要となる。そこで、神経細胞や脳内における解析を進めるために、神経細胞の初代培養、レンチウイルス、あるいはAAVによる遺伝子導入の準備を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ下であったため、学会発表がオンラインになったため、当初予定していた旅費を物品費に回したが、全て使用できなかった。来年度の旅費として使用したい。
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