研究実績の概要 |
ビタミンDは骨代謝や免疫調節に関連した様々な作用を持ち、その不足は乳幼児の骨疾患だけでなく、成人の免疫性疾患、悪性腫瘍などのリスクとも関連するため、その代謝物の精確な定量が必要である。ビタミンD代謝物は血液中ではビタミンD結合蛋白質に結合して循環しており、ビタミンD代謝物の濃度を決定する重要な因子である。本研究では、精確な定量の為に質量分析を用いたビタミンD代謝関連マーカー[25(OH)D、24,25(OH)2D、1,25(OH)2D、およびビタミンD結合蛋白質(DBP)]の解析法を構築することを目的とする。加えて、ビタミンD代謝物のキャリア蛋白質であるDBP (GC遺伝子)には遺伝子多型が存在する為、GC遺伝子多型がビタミンD代謝関連マーカーの血中循環量にどのように影響するのかを明らかにし、包括的なビタミンD代謝動態の把握を目指す。DBPについて、LC/MS/MSを用いた定量分析法の構築を目指したが、内部標準として用いる安定同位体標識蛋白質を入手することが困難であったため、GC遺伝子型の影響を受けないと考えられているポリクローナル抗体を用いたELISAを使用した。健常者232例のビタミンD代謝物の値とGC遺伝子多型の関連を調べた。GC遺伝子多型はGC1/1群(GC1F/1F, GC1F/1S, GC1S/1S)、GC1/2群(GC1F/2, GC1S/2)、GC2/2群(GC2/2)の3つに分けて解析した結果、血清25(OH)D3および1,25(OH)2D3はGC遺伝子多型群毎に有意な差を認めた。一方、f25(OH)D、VMR-A/Cを算出し、その結果をGC遺伝子多型毎に比較した。f25(OH)D、VMR-A/Cのいずれもが有意な差を認めず、GC遺伝子多型による影響を受けないことが示唆された。
|