研究成果の概要 |
代表者は,多能性幹細胞細胞から機能的時計中枢 (視交叉上核SCN)を高効率で誘導し,成熟させることに成功した. 誘導されたSCN組織(SCNオルガノイド)はSCN特異的遺伝子を発現しており, 構造もある程度再現され, 成体視床下部のわずか0.7%に過ぎないSCNが20%以上誘導されていた.また,時計遺伝子の発光イメージングでは,SCNにしか存在しない細胞時計の同期機構が証明された.さらにSCN破壊マウスへの移植では,SCN破壊で消失した行動リズムが回復した.SCNオルガノイド技術はヒトiPS細胞へも応用可能なことを確認でき,概日リズム障害治療薬のスクリーニングにも有望と考えられた.
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研究成果の学術的意義や社会的意義 |
体内時計は全身ほぼすべての細胞にあるが, 哺乳類においては視床下部の視交叉上核 (SCN) が時計中枢として機能し, 時刻情報を全身に伝えている. 現代の眠らない社会において, 体内時計は適応できなくなってきている. 近年, SCNの同期機構を弱めると, 時差ぼけになりにくいことが示されつつあり, 創薬ターゲットとして期待されている. 代表者が開発したSCNオルガノイド技術をヒトiPS細胞に応用することで, ヒトSCNを試験管内で作製すれば, 既存薬のスクリーニングすれば, 時差ぼけ治療薬の同定が可能となる. 本治療薬は交替勤務型睡眠障害や高齢者の昼夜逆転などにも応用可能と考えられる.
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