研究実績の概要 |
副腎由来代謝産物を用いて新規骨粗鬆症診断バイオマーカーを開発するため、「副腎由来ホルモン過剰モデル」である機能性副腎腫瘍を用いて、骨粗鬆症との関連性について検討を実施した。従来、コルチゾール過剰が「ステロイド骨粗鬆症」を引き起こすことはよく知られているが、ヒトにおいて、アルドステロンあるいはカテコールアミンにおける骨代謝への影響は十分に分かっていない。アルドステロン過剰をきたす原発性アルドステロン症において、代表的な脆弱性骨折である椎体骨折が高率であり、これにはアルドステロン過剰のみならずコルチゾール過剰が関与することを報告した(Clin. Endocrinol. (Oxf) 92: 206-213, 2020)。さらにカテコールアミン過剰をきたす褐色細胞腫において、低骨密度をきたし、椎体骨折が高率であること、腫瘍摘出後に骨密度は有意に改善することを明らかにし、褐色細胞腫は新たな続発性骨粗鬆症の原因疾患となり得ることを報告した(Bone 133: 115221, 2020)。一方で、褐色細胞腫では骨粗鬆症のみならず高率に動脈硬化を併発することを報告し(Osteoporos. Int. 31: 2151-2160, 2020)、多くの加齢性疾患における副腎由来ホルモンの病態生理的意義に注目した。直近では、褐色細胞腫における椎体骨折には骨密度よりもむしろ構造的骨質の評価指標であるTrabecular bone scoreが関連していることを見出し、腫瘍摘出後にTBSが有意に改善することを報告した(Bone 142: 115607, 2021)。以上より、副腎由来ホルモンは特に骨質の制御を介して骨代謝に影響していると想定した。
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