主要な内分泌臓器である副腎は、内外のストレスに応答してホルモンを分泌し、生体の恒常性を維持している。副腎は3層構造を呈する皮質と髄質より構成され、皮質では層特異的にステロイドホルモン(ミネラルコルチコイド、グルココルチコイド、副腎アンドロゲン)が産生され、髄質ではカテコールアミンが産生される。ホルモン過剰状態では、ストレス応答性が破綻し、様々な加齢性疾患を引き起こす。コルチゾールの過剰はステロイド骨粗鬆症を引き起こすことはよく知られているが、我々は、観察研究により原発性アルドステロン症(アルドステロン産生腫瘍)や褐色細胞腫(カテコールアミン産生腫瘍)と骨粗鬆症との関連性を報告した。さらに、メンデルランダム化研究により副腎アンドロゲンの骨保護作用を報告し、生理的条件での副腎由来ホルモンにおける骨代謝への影響を明らかにした。一方、近年、ステロイド中間代謝産物の心血管代謝疾患における病態生理的意義が示唆されている。最終年度は、LC/MS/MS法を用いて、網羅的ステロイドミクス解析を実施し、クッシング症候群(コルチゾール産生腫瘍)の患者を対象として、副腎由来ステロイド代謝産物がどのように骨粗鬆症に関与しているのかを検討した。その結果、特に閉経前女性のクッシング症候群患者では、特徴的なステロイドプロファイルを呈しており、副腎腫瘍はグルココルチコイドに加えてミネラルコルチコイド代謝産物を産生し、これは骨量低下に関与すること、グルココルチコイド過剰は付随副腎を萎縮させて副腎アンドロゲン産生は抑制し、これは骨質劣化に関与することを見出した。以上より、多様な副腎由来代謝産物が協調して内因性ステロイド骨粗鬆症の進展に影響していることが示唆された。
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