研究課題
難治性慢性呼吸器疾患である肺 MAC (M. avium complex) 症は、世界中で患者数の増加傾向にある。やせ型中高年女性の非喫煙者が多いこの疾患は、広範な肉芽腫形成による気管支内腔の破壊やその周りの線維化が特徴な病理所見である。肺 MAC 症の発症要因は未だ不明な点が多く、確定診断と治療介入の基準があいまいな感染症である。本年度は、当院検査部で分離されたM.avium complex株を用いてMATR-VNTR解析を行った。M.avium complexの同定試験は、固形培地(2%小川培地:極東製薬社)や液体培地(MGIT:日本B.D.社)で分離された菌株をPCR法(cobas MAI:Roche社)を用いて同定した。菌株のDNA抽出は、QIAamp DNA mini kit(QIAGEN社)で行い、えられたDNAをもとに多型解析を行った。多型解析は、15ヶ所のMATR-VNTR領域を対象としPCR増幅反応を行った (T. Inagaki et al. J Clin Microbiol. 2009)。PCR産物は、2 % アガロースゲル電気泳動により分離した。分離された菌株は、材料種によって同一クローンを示した。肺MAC症は、診断基準が難しく確定診断と治療介入の基準があいまいな感染症である。本年度は、まずcontaminationの除外を目的としてMATR-VNTR解析を行った。またcolonaiztionによる感染の有無の確認を肺MAC抗体などの検査法や患者背景(性別、年齢、基礎疾患、臨床、画像所見、臨床経過など)をもとに検討を進めている。
3: やや遅れている
菌株の発育に時間がかかるなど基礎実験に時間を割いているため。
次年度は、本研究の目的に最適な培養細胞株の一つを選定し、マイクロアレイを実施する。感染細胞から RNA を抽出して microRNA のプロファイリングを行う予定である。プロファイリングされたmicroRNAから数種類選択し、リアルタイムPCRを行う予定である。
菌株の培養などの基礎実験に予想以上の時間を費やし、予定していた高額な支出を要する網羅解析の実験は次年度に繰り越した。次年度には、このマイクロアレイの実験を早々に行う予定である。
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