研究課題/領域番号 |
20K16530
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研究機関 | 山陽小野田市立山口東京理科大学 |
研究代表者 |
高田 誠 山陽小野田市立山口東京理科大学, 薬学部, 助教 (60551348)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | HPLC / 蛍光検出 / トシリズマブ / FRET / 薬物相互作用解明 |
研究実績の概要 |
本研究では、分子間蛍光共鳴エネルギー移動に基づくトシリズマブ(TCZ)の新規HPLC分析法の開発と薬物相互作用解明へ応用することを目的としている。関節リウマチ治療薬であるTCZは、投与中に重篤な有害事象を合併する可能性があり、また、他の疾患修飾性抗リウマチ薬や非ステロイド性抗炎症薬との併用における相互作用についての研究も十分には行われていない。そのため、TCZの血中濃度を測定することは、薬物動態学的視点から、副作用回避や治療効果の確認のみならず、薬物相互作用を解明する上でも有用であると考えられる。現在、TCZなどの抗体医薬品の定量には、抗原抗体反応を利用したリガンド結合法やLCMS/MS法が主に用いられている。しかしながら、いずれの方法も前処理操作が煩雑であることや測定にかかるコストなどの問題点から、臨床現場では汎用されていない。本研究の目的とする分析法は、煩雑な前処理を必要とせず迅速・簡便かつ安価な分析法であることから、関節リウマチの薬物治療における有用なツールとなり得る。 当該年度では、トシリズマブの自然蛍光検出による新規HPLC定量法を開発できた。本法は、前処理にアルキル鎖の長い第1級、2級アミンを用いることで、抗原抗体反応やトリプシン消化などの煩雑な前処理を必要とせず、20分程度で前処理を含めた測定が可能であり、これまでの測定法と比べて非常に迅速かつ簡便な方法であると言える。また、酵素免疫反応を利用しない方法であることから、他の抗体医薬品への応用の可能性も示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナの影響もあり、トシリズマブ標準品として用いるアクテムラ購入のための覚書締結に期間を要した。加えて、緊急事態宣言に伴う大学構内立入制限なども研究が思うように進捗できなかった理由と考えている。また、当該年度開発したトシリズマブの自然蛍光検出によるHPLC定量法は、非常に簡便かつ迅速な方法である一方、回収率と感度の面では改善の余地があったため、現在、前処理法を含めた条件の更なる検討を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度開発したトシリズマブの自然蛍光検出によるHPLC定量法は、非常に簡便かつ迅速な方法である一方、回収率と感度の面では改善の余地があった。そこで現在は、回収率の向上を目指し、アルキル鎖がさらに長いアミン類について検討を行っている。また、他の抗体医薬品への応用の可能性が示唆されたため、薬物相互作用解明を目的として、関節リウマチ治療薬である抗体医薬品のインフリキシマブへと本法を適用している。同時に、選択性の向上を目指し、市販のDansyl系蛍光試薬を用いて、TCZ由来の自然蛍光とFRETを起こす蛍光試薬のスクリーニングを行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
オートサンプラーをキャンペーン価格で購入できた。また、覚書の締結に至らずアクテムラの購入ができなかったため、当初予算より少なくなった。したがって、翌年度にアクテムラや蛍光試薬の購入費として使用する。
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