研究課題/領域番号 |
20K16540
|
研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター) |
研究代表者 |
西嶋 智洋 独立行政法人国立病院機構(九州がんセンター臨床研究センター), その他部局等, 老年腫瘍科医師 (20840549)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
|
キーワード | 高齢者総合的機能評価 / CGA / FI-CGA-10 / 治療方針 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本人の高齢がん患者において「高齢者総合的機能評価(Comprehensive Geriatric Assessment:CGA)」の有用性を評価することである。 昨年度は、CGAに基づいて高齢者のFrailtyを評価するツールとして10-Item Frailty Index Based on a Comprehensive Geriatric Assessment(FI-CGA-10)を作成し、その構成概念妥当性(Construct Validity)を検討し、その結果を論文で報告した。 本年度は、主治医からコンサルトを受けて老年腫瘍科でCGAを実施した患者(498人)を対象に、FI-CGA-10を用いたFrailtyの評価が治療方針の決定に与える影響について検討した。これらの対象患者は、FI-CGA-10にもとづいて19%がFit、40%がPre-Frail、41%がFrailと判断された。CGAコンサルト前に主治医が検討していたがん治療方針は、根治治療が56%、延命治療が40%そして緩和治療(BSC)が3.4%であった。CGAコンサルト後に、FI-CGA-10に基づくFrailtyの程度とそれに基づく老年腫瘍科の推奨が主治医、診療科のカンファレンス、患者そして家族と共有された結果、45%の症例において治療方針が少なくとも一部変更された。その結果、最終的に実施された治療は、根治治療が45%、延命治療が34%そして緩和治療(BSC)が21%であった。さらに、CGAにより多職種による介入が一つ以上推奨された患者は88%で、その内43%は実際に介入が行われた。また本研究において2年前に開発した「CollaboRATE」の日本語版を用いて治療方針の決定における患者満足度を評価した。老年腫瘍科におけるCGAの患者満足度は、CollaboRATE(0-9の値をとり、9が最も良いスコア)の平均値が8.2、48%の患者は最も良いスコアの9と回答した。これらの結果から、FI-CGA-10を用いた老年腫瘍科におけるCGAコンサルトはがん治療方針に影響を与えること、そして患者の受け入れも良好であることが示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的であるCGAの有用性評価として、FI-CGA-10を用いた老年腫瘍科におけるCGAコンサルトががん治療方針に与える影響そして患者満足度を検討した。この結果を、American Geriatrics Society (米国老年医学会)のofficial journal JAGS (Journal of the American Geriatrics Society)に論文発表した。 老年腫瘍科でCGAコンサルトを受けた患者を対象とした、治療方針の決定やがん治療やケアに関する患者の満足度に関する前向き観察研究に順調に症例を登録できている。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究において、本年度はCGAががん治療方針に影響を与えること、そしてCGAコンサルトの患者の受け入れが良好であることが示された。今後は、CGAに基づいたがん治療方針の決定や介入がアウトカムに与える影響を検討する。また、CGAに基づいたがん治療やケアに関する患者満足度を明らかにするため、前向き観察研究に患者の登録を継続する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度の予算は予定通り使用したが、21年度の繰越分がまだ一部残っている。来年度の研究活動において適切に使用する予定である。
|