研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本人の高齢がん患者において「高齢者総合的機能評価(Comprehensive Geriatric Assessment:CGA)」の有用性を評価することである。 本年度は、老年腫瘍科開設前 (2015年から2018年, n=151)と開設後(2018年から2021年, n=191)に、九州がんセンター消化管・腫瘍内科で進行がんに対して一次治療が考慮された70歳以上の患者のアウトカムを比較した。老年腫瘍開設後の群では、82人ががん治療開始前にCGAコンサルトを受けた。この内42人 (60%)の患者でFrailtyの評価によりがん治療方針が変更された。老年腫瘍開設前後の群でそれぞれ128人と154人が実際に化学療法を開始し、それ以外の患者はBSCの方針となった。化学療法が開始された患者のTime to Treatment Failure (TTF)のイベント頻度は、30日時点で5.7% versus 14%、60日時点で13% versus 29%で、いずれも老年腫瘍開設後の群で有意に低く良好な結果であった。さらに、1年生存についてもハザード比 0.64 (95% CI, 0.44 to 0.93; P < .02).で老年腫瘍開設後の群で有意な改善が見られた。これらの結果から、老年腫瘍科でCGAを実施することが治療方針の決定に影響を与えアウトカムを改善することが示された。
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