研究課題/領域番号 |
20K16547
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研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
金重 里沙 山口大学, 大学院医学系研究科, 助教 (30844104)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 抗リン脂質抗体症候群 / 抗リン脂質抗体 / CD14 / フローサイトメトリー / ELISA |
研究実績の概要 |
抗リン脂質抗体の血栓形成作用の解明に関する研究では、抗リン脂質抗体が認識する細胞表面分子を検討した。まず、ヒト末梢血単核細胞(PBMC)を患者由来のIgG-抗リン脂質抗体にて刺激し、刺激後の単球表面CD14発現を解析した。その結果、CD14 抗原が shedding する現象を捉えた。Sheddingの度合いは抗カルジオリピン/β2-グリコプロテインI抗体(aCL/β2GPI)及び抗ホスファチジルセリン/プロトロンビン抗体(aPS/PT)がそれぞれ単独であるIgGで刺激した場合よりも、両抗体が共陽性であるIgGで刺激した場合に大きかった。さらに、IgG-抗リン脂質抗体にて刺激する前に単球をモノクローナル抗 CD14 抗体で処理することで、単球表面の組織因子(TF)発現が有意に抑制されることを明らかにした。したがって、抗リン脂質抗体による単球表面TF発現には、CD14 抗原が関与していることが示唆された。本研究成果は関連の学術誌に掲載予定である。 抗リン脂質抗体測定法の標準化に関する研究では、2つの抗リン脂質抗体(抗カルジオリピン抗体(aCL)・抗β2-グリコプロテインI抗体(aβ2GPI))を測定可能な5つの抗リン脂質抗体測定試薬(MESACUP-2 test, QUANTA Lite, MEBLux test, QUANTA Flash, EliA)の有用性について検討し、国際学術誌Journal of Clinical Laboratory Analysisに掲載した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度の研究計画は抗リン脂質抗体の血栓形成作用の解明であり、抗リン脂質抗体を認識する細胞表面分子の探索した結果、抗リン脂質抗体は単球表面CD14抗原を介して組織因子(TF)を発現させる可能性を見出した。一方、抗リン脂質抗体測定法の標準化に関する研究において、複数種類の抗リン脂質抗体を同時に測定できる自動分析システムは、抗リン脂質抗体検査の標準化および普及に極めて有用であることを示した。
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今後の研究の推進方策 |
現在までに、単球に対しプライミング作用を有する因子の特定、並びにプライミングによるIgG-抗リン脂質抗体の単球表面組織因子(TF)の発現増強作用を確認した。さらに、単球表面CD14が抗リン脂質抗体を認識するエピトープの1つである可能性を明らかにするとともに、抗リン脂質抗体測定アッセイの有用性を検証した。最終年度は各種抗リン脂質抗体の血栓形成作用および細胞傷害作用について、単球に加え好中球にも着目し、細胞表面マーカー・接着因子発現・サイトカイン産生等を解析する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、参加予定であった学会が中止あるいはオンライン開催となり、旅費が発生しなかったため余剰が生じた。未使用額については、令和4年度の試薬購入と旅費の一部に充てる。
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