研究課題/領域番号 |
20K16550
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研究機関 | 香川大学 |
研究代表者 |
植村 直哉 香川大学, 医学部附属病院, 助教 (20795124)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 高尿酸血症 / 術後せん妄 / 認知機能障害 |
研究実績の概要 |
尿酸は痛風や高尿酸血症の原因因子として知られ、心血管疾患との関連が注目されている。一方で、強力な抗酸化物質として神経保護作用を持つことが知られており、脳梗塞巣の縮小に尿酸投与が有用であったという報告がある。我々は、尿酸の輸送体であるURAT1,GLUT9 が脈絡叢に存在する可能性をヒト剖検脳で新規に見出し報告した(Neurosci Lett 2017; 659:99-103)。この研究から尿酸が全身循環から脳内に血液脳関門を通過して移行しうると考え、“血清尿酸値が高値の患者は、脳脊髄液中の尿酸値が高くなるため、脳室周囲組織において抗酸化作用、神経保護作用により認知機能障害を起こしにくい”との仮説を立て、高侵襲手術後に集中治療室(ICU)に入室した患者2071名を対象に血清尿酸値と術後せん妄に関する後ろ向き観察研究を行った。中枢神経疾患の既往がある、脳神経外科術後、複数回の手術を受けた、緊急手術受けた、末期腎不全などの患者を除外し、558名で統計学的解析を行った。ICU患者におけるせん妄モニタリング手段であるCAM-ICUをせん妄評価方法とした。CAM-ICU(+)の患者は78名(約14%)であった。ロジスティック回帰分析から抽出された7つの因子で傾向スコアマッチングを行いCAM-ICU(+)群とCAM-ICU(-)群の術前後の血清尿酸値や術前後の差について検討した。CAM-ICU(+)群とCAM-ICU(-)群で術前血清尿酸値、術後血清尿酸値、術前後の血清尿酸値の差のいずれも有意差はなかった。原因としてICU患者間でも侵襲が異なり術後せん妄の発症リスクが異なる可能性が考えられる。今後、心臓血管外科や消化器外科など同程度の手術侵襲の患者間での検討を行う予定である。尿酸の術後せん妄や認知機能への影響の解明が、難治性神経疾患への新たな予防法・治療法開発につながると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「血清尿酸値と術後せん妄に関する後ろ向き観察研究」の論文作成中である。アルツハイマー患者の剖検脳における尿酸輸送についての解析も行っている。
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今後の研究の推進方策 |
他施設からアルツハイマー剖検脳の提供を受ける手続きを進めている。アルツハイマー患者の剖検脳における尿酸輸送について非アルツハイマー患者と違いを検討していく。尿酸輸送体として報告されているOAT10やGLUT12のヒト剖検脳における局在を免疫組織化学染色で明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルスの影響で学会がWEB開催であったため、計上していたほど旅費がかからなかった。令和4年度の旅費、または試薬や抗体の購入・作成に使用する。
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