研究課題/領域番号 |
20K16553
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
竹之内 和則 鹿児島大学, 医歯学域医学系, 助教 (30646758)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 血管内皮増殖因子 / 2次リンパ節 / 3次リンパ節 / 脾臓 / 骨髄由来免疫抑制性細胞 / 制御性T細胞 |
研究実績の概要 |
これまで我々は、Crow-Fukase 症候群の病態解析モデルとして、B細胞特異的に血管内皮成長因子Vascular Endothelial Growth Factor (VEGF) を過剰発現するマウス(CD19Cre/VEGF-Tg, CD19はB細胞特異的マーカー)を作成し研究を行ってきた。その過程でB細胞由来のVEGFは、リンパ節内で高内皮細静脈 High Endothelial Venule (HEV) を増加させ、肥満細胞を集簇し、脾臓の肥大化と赤脾髄・白脾髄の組織構造の崩れをもたらすこと、 ovalbumin に対する獲得免疫・抗体産生を減弱させることを報告してきた (J Immunol. 2010)。また、2017年以降の2年間で、このマウスモデルのHEVは免疫細胞をリクルートするための接着分子などは十分保持し、機能的役割を担っていること、また、VEGF が免疫機能に対して抑制的に働いていることも確認出来た。 今回我々は、ovalbumin 投与後の2次リンパ節内の病理組織について、B細胞特異的 VEGF 発現マウスと野生型マウスの両群比較を行った。その結果、リンパ節内でのCD11b+Gr1+Myeloid-derived suppressor cells(MDSC)は増加傾向にあったが、有意な差を認めなかった。また、T細胞、B細胞の増殖は抑制され、胚中心の構造は崩れていた。 現在も組織染色により、Fox3+Treg や肥満細胞との関わり、また脾臓でのVEGFの影響について詳細に分析中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、ovalbumin 投与下での in vivo 検体を取得し、病理組織での解析に着手している。MDSC, Fox3+Treg, 樹状細胞(DCs), B細胞、CD8+T細胞、肥満細胞においても同様にリンパ組織内での偏在、数の増減、接している細胞の傾向などを分析中である。 また、脾臓の組織も取得済みであり、今後上記細胞群と同様の解析を試みる。 これまでのところ、取得した病理組織において、今までの所見と大きく変わるところはなく、実験系は再現性を保てている。
|
今後の研究の推進方策 |
既に取得した病理標本については今後も解析を継続する。また、新たにovalbumin 投与を行い、脾臓浮遊液、リンパ節浮遊液を用いたフローサイトメトリーによる解析も検討している。組織上だけでは、有意な差が得られない場合は積極的にこれに取り組み、3次元的な解析を行えるものと期待する。 それに加え、資金に余裕がある場合は担癌マウスの作成も検討する。既報では、担癌マウスの腫瘍組織では MDSCの増加を認め、T細胞の浸潤が減少傾向になる、とする報告もある。これは、腫瘍細胞が放出する VEGFが抗腫瘍効果を発揮し、免疫回避機構を構築している為と推察する研究者もある。同様の事が CD19Cre/VEGF-Tg の担癌マウスでは増強されるのか、あるいは特に変化が無いのかを確認し、より腫瘍免疫に対するVEGFの影響を解析する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行により、学会参加が困難になり、旅費の使用が無かった。また、当該施設の動物実験施設の移動計画が発表されたために、使用している遺伝子改変動物を一時的に凍結保存する必要が出てきた。その結果、使用動物数が減少してしまい、計画より実験の遂行が停滞し、消耗品の使用量が減少した為。 実験動物の移動が計画通り進んだ後は、病理標本などの作成を行い、速やかに計画に追いつくつもりである。
|